UD検定講座を受講して

2024 / 2 / 6 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

エコネットワークス(ENW)が運営するコミュニティ、TSAでは「サステナビリティファンド」という仕組みを設けています。TSAに参加するパートナーが自身や社会のサステナビリティにつながる活動をしたいときに、資金面から取り組みを応援する制度です。

岩村 千明さんは、ファンドを活用し「UD検定講座」を受講。ユニバーサルデザイン(UD)への理解を深め、誰もが生きやすい社会をつくるためにできることを考えました。


執筆:岩村 千明

静岡県在住のライター。一人ひとりが「自分」の大切なものを大切にできる、「自分」を生きられるきっかけになるような発信を心がけている。


車いすにのる人

(Photo by svklimkin via Pixabay)

以前、「誰ひとり取り残さない社会の実現に向けて」というテーマで取材をしたときに、ある方が次のように話していたのが印象的でした。

人々の意識を変え、行動変容を促すことは本当に難しい。建物の構造や製品など、ハード面から整えていくことが、実はインクルーシブな社会実現への近道なのかもしれない

アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を認識したところで、心の奥底に深く根付いた価値観を大きく覆し、短期間で本質的に変わることは難しい。私自身、そんな風に感じていた時期でもあったため、この言葉に深く納得し、それまで仕事でも少し触れてきたUDやインクルーシブデザインへの関心が一気に高まりました。そして、このたびサステナビリティファンドを活用して、一般社団法人国際ユニヴァーサルデザイン協議会のUD検定・初級講座を受講しました。

認定証

3回にわたる講座を受講し、無事に合格しました!(Photo by Chiaki Iwamura)

特権を自覚することが、配慮やUDにつながる

今回の検定では、UDの概念や歴史、具体的な事例や課題などについて学びました。受講を終えて、まず感じたのは「自宅や公共施設など普段の暮らしの中にも既にUDがたくさん組み込まれている」ということです。例えば、我が家を含め最近の住宅では、照明スイッチが指先でなくても押せる大きなサイズのものに変わっています。

自宅の照明スイッチ

自宅の照明スイッチ(Photo by Chiaki Iwamura)

また、ドアのハンドルに関しては、従来の握り玉は「握りながらひねって開く」という複雑な操作が必要だったため、レバーハンドルを採用するケースが増えているとのこと。いずれも言われてみれば「確かに!」と納得するのと同時に、従来のデザインでは不便を感じる人々がいることに思いをはせることができていなかった自分に気づきました。

当たり前のように享受している「特権」を自覚することは、特権を享受できない状況に置かれた人の生きづらさや困難に気づくことにつながります。そして、ひいてはそれが利用に制約のあるユーザーが使いやすい工夫やデザインにつながるのだと改めて感じた瞬間でした。

多様なニーズに応えるために

もう一つ、この講座を通して学んだのが、様々な特性や事情を抱えている私たちのニーズすべてに応える社会インフラや製品をつくることは決して容易でないということです。

その一例としては、点字ブロックが挙げられます。視覚に障害のある方にとっては命を守る重要なインフラである一方、表面の突起が車椅子ユーザーや高齢者にとって移動の障壁になることがあるといいます。

また、公衆トイレなどの施設で増えているセンサー式洗浄やタッチレス水栓は、衛生的な観点からとりわけコロナ禍でニーズがより一層高まりました。その一方で、視覚に障害のある方にとっては「どこに手をかざしたらよいのか分からない」という課題があります。

調べてみたところ、一つ目の点字ブロックの問題に関しては、視覚に障害のある方々や車椅子ユーザーなどを交えながら意見交換を行い、解決策を模索しているようです。二つ目の課題については、「操作ボタンの位置の規格化」が重要なポイントだと言います。現在、多機能トイレを中心に規格化が普及しつつあり、今後は一般トイレへのさらなる普及も検討されています。(参照:LIXIL パブリックトイレラボ、利用者視点で考える

これらの事例は、異なるニーズすべてに応えることは難しいものの、研究開発や設計などの初期段階から多様な視点を取り入れていくことの大切さを改めて教えてくれました。

今後も学びを深め、アクションにつなげたい

誰もが生きやすい社会をつくるためには、建物の構造や製品などのハード面において解決すべき課題がまだ山積みであることを再認識できた今回のUD検定講座。

一人の物書きとして、人権やDE&Iなどの観点から人々の意識に働きかける記事を書いていきたい。その気持ちは今も変わりませんが、今後はUDやインクルーシブデザインについてもっと知識を深め、何かしらの形でアクションを起こしていければと思います。

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