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池を作って1年経ちました~スコットランドからの報告~
チームサステナビリティにかかわるパートナーによる、サステナブルな暮らしの挑戦。スコットランドに住む杉本優さんから、池づくりのレポートが届きました。5年くらいをかけて、新居に緑を増やし、生き物が集まるオアシスを作る計画だと言います。その2年目の様子とは…?
執筆・撮影:杉本 優
スコットランド・ダンディー市在住のフリーランス英日・日英翻訳者
プロフィール https://www.way2japan.com/en/sustainability/
2018年の春先に始まった池作り計画。11月に上下2つの半円形の池が完成し、少し植物を入れただけで冬を迎えました。それからの1年間を振り返ってみました。(前回のレポートはこちらです。)
3月

春先に買った水生植物。専用の貧栄養土を使い、鉢植えにして池に沈めました。鉢と言っても、水が通る必要があるのでプラスチックのカゴ状の容器と不織布製の袋状のもの。
たくさん買ったつもりでも、2つの池に分けて入れると下の写真のようにスカスカでした。植物を入れた直後は土の粒子が浮いてきて水がにごってしまいますが、放置しておくと徐々に沈殿して澄んできます。

上の池

下の池
4月
毎日ぐんぐん日が長くなっていく季節。池の透明度はずいぶん上がりましたが、今度は水が緑色になってきて藻が大発生しました。

上の池

下の池

発生した藻は、日本語でアオミドロ、英語ではblanket weedと呼ばれるもので、引き上げてみるとヌルヌルした感じが緑色のとろろ昆布のようです。

放置するとどんどん増えてしまうので、すくい上げて堆肥に入れます。虫などの生き物が絡まって上がってくることも多いので、逃げるチャンスを与えるため、このように一晩池の縁に放置してから堆肥容器に入れます。
6月
上の池を作った時、擁壁に接した池の縁の直線部には、建設現場用の足場板を置いていました。この部分は防水シートを埋め込むことができず剥き出しのままなので、シートを覆うために仮置きしてあったのです。その時は、後で大きなプランターを買って置こうと思っていました。

池を作った時の状態。足場板が置いてあるのがわかるでしょうか。
でも、庭を掘ると大小とりどりの石が山のように出てきて処分に困っていたので、ふと、プランターの代わりにガビオンウォール(gabion wall)を作れば、両方の問題をまとめて解決できると思いつきました。
ガビオンというのは目の荒いワイヤメッシュのパネルをコイル状のワイヤでつなぎ合わせたカゴで、中に石を詰めるだけでモルタルを使わずに頑丈な石垣を作ることができます。素人でも簡単に石壁を組むことができるので、近年これをガーデニングで利用することが増えています。美観重視なら中に入れる石も見栄えが良いものを買う必要がありますが、我が家の場合は庭で出てくる邪魔な石の有効活用が目的なので、買うのはカゴだけと安上がりです。さらに、石の間の隙間は虫の隠れ場所・冬越し場所としても役立つので、「自然の生き物が集まる池」というテーマにも合っています。

カゴ詰め作業の途中。石の他に生け垣を剪定した時に出た木の枝や割れた屋根瓦など、庭で出てきた雑多なものを詰めてあります。
プランターを使う計画だった時にはツタを植えて擁壁を覆うようにしたいと思っていたので、ガビオンウォールにもツタを植えました。

完成したガビオンウォール。
ガビオンウォールの前にあるのはソーラー噴水。水面に浮く円盤状のソーラーパネルの下に小さなポンプがついています。日差しの強さに従って噴水の勢いが変わります。
エディンバラで毎年開催されるガーデニングショーに行き、そこでも池に入れる植物を買い足しました。前年秋と今年春に植えた植物もだんだん育ってきていて、かなり賑やかになりました。

上の池

下の池
7月
植物が元気に育ち、花が咲いたものもあります。植物の生育に従って水中の栄養分が減り、アオミドロも発生しにくくなりました。浅瀬の部分には毎日いろいろな野鳥が水飲み・水浴びにやってきます。近づくと逃げてしまうので写真を取れないのが残念です。

上の池

下の池

植物に紛れてやって来たと思われる巻き貝。
9月
春先に撮ったスカスカの写真と比べると、ずいぶん植物の緑が増えました。池の健康と生物多様性のためには、水面上に出てこない水草(沈水性植物)、葉が水面に浮かぶスイレンなどの浮葉性植物、水上に立ち上がって育つ抽水性植物をバランスよく混ぜるのが良いそうです。使っているのは英国に自生する植物が中心ですが、斑入りのセリなど非自生種もいくつか入れています。

上の池

下の池
11月
急に寒くなって、池にも氷が張りました。

上の池

下の池
冬にはほとんどの植物が根だけ残して枯れてしまいますが、来年はもっと大きく育ってくれるのではと楽しみです。秋にはヤゴのような姿の昆虫の幼生を見かけましたが、一体孵化したら何になるのでしょうね。今年は両生類の姿は見えませんでしたが、こちらも来年に期待です。