上勝町HOTEL WHYでリトリートをしながら、ゼロ・ウェイストを考える【前編】

2022 / 9 / 2 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

エコネットワークス(ENW)が運営するコミュニティ、TSA(Team Sustainability in Action)では、「サステナビリティファンド」という仕組みを設けています。TSAに参加するパートナーが自身や社会のサステナビリティにつながる活動をしたいときに、資金面から取り組みを応援する制度です。

TSAパートナーの立山美南海さんは、ファンドを利用して徳島県上勝町を訪れ、ゼロ・ウェイストを学んだそうです。どんな学びがあったのでしょうか?

※TSA(Team Sustainability in Action):
ENWに関わるパートナーのプラットフォーム。サステナブルな働き方や暮らし方を志向する個人が集う、学びと実践の広場。
参考記事 サステナブルな価値を生み出す「広場」としてのTSA

※サステナビリティファンド:
参考記事 ファンドに背中を押されて始まる等身大のサステナビリティ


執筆・撮影:立山 美南海
東京都在住の翻訳者・翻訳コーディネーター


サステナビリティファンドを利用して、上勝町のゼロ・ウェイストアクションホテル “HOTEL WHY” に2泊3日、パートナーと二人で滞在してきました。
ミッションは二つです。
① 自然の中で心身をリセットする
② ゼロ・ウェイストの秘密を知り、持ち帰って実践する

ホテルwhy外観

HOTEL WHYを知ったのは、宿泊の1年程前。調べ物をしていた時にたまたま見つけて、ずっと「行ってみたい!」と思っていました(この機会をくださったサステナビリティファンドに大感謝!!)。
ホテルに着くと、まずは「STUDY WHY」と名付けられたゴミ収集所ツアーに案内されます。ゴミ収集所の端にある黄色い看板の前からスタート。本来は15分程度のツアーなのですが、たくさん質問をしてしまったため、結局40分程スタッフさんにお付き合いいただくことになりました。

ゼロ・ウェイストセンターに掲示されるポスター

STUDY WHY:ゴミ収集所ツアーに参加

上勝町が日本初のゼロ・ウェイスト宣言をしたのは、なんと2003年! 私が7歳の時です。その頃、世の中の環境意識がどうだったのかは記憶にないのですが、きっと今よりも薄かったはずです。

そんな中、上勝町がゼロ・ウェイストに踏み切れたのはなぜか。聞いてみると、「財政的な理由があった」と、なんともリアルな答えが返ってきました。宣言をする数年前、上勝町は小型焼却炉2基を新たに購入し、設置しました。しかしその直後、ちょうどダイオキシンが大きな問題となり、2000年にはダイオキシン特措法が施行されます。同町は小型焼却炉を閉鎖せざるを得なくなりますが、有害物質の排出量が適正な焼却炉を新たに購入する資金はありません。町内でゴミが処理できないなら町外に依頼するしかありませんが、それにもお金がかかります。

そこで出てきたのが、「燃やすごみを減らさなければ」という切実なニーズでした。ゴミと資源を細かく分別し、どうしても出てしまうゴミは町外で処理し、リサイクルできるものは資源化してお金にすることで、処理コストを抑えようと決めました。

「町民の反対はなかったのですか?」と聞くと、スタッフさんは「大反対でした」と苦笑いで教えてくれました。33分別からスタートした当初は、不法投棄が増えてしまったとのこと。田舎あるあるで「自分の山」を持っている家庭が多いため、そこに捨てる人が多かったそうです。

町民の猛反対を受けた上勝町は、もともと財務的な背景から始まった「トップダウン」の姿勢を見直し、草の根レベルで運動を進めていくことにしました。住民と何度も話し合いを重ね、もともとは日時限定で運営されていたゴミ収集所は、年末年始以外は毎日スタッフがいるようにし、分別の仕方が分からなかったら気軽に聞けるようにしました。また、高齢者など、車を運転できない家庭には軽トラックで訪問し、ゴミを個別に回収するようになりました。

こうした努力を積み重ねてきた結果、2016年にはリサイクル率80%台を達成。2020年には、2030年に向けた新たな「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表しました。「分別が町民の『当たり前』になるまで、20年かかった」と、スタッフさんは苦労を語りました。

宿泊した部屋に置いてあった冊子に新ゼロ・ウェイスト宣言が載っていました。

ゴミ収集所の入り口付近。上勝町の「収入」になる資源ゴミを持ち込むと「ちりつもポイント」が貯まります。一定以上貯まると、ゴミをまとめる紐や学校の体操服などに交換できるそうです。

「何を入れるボックスか」がイラストとともに分かりやすく示されています。面白いのは、「そのゴミを処理すると収入/支出がいくらになるか」が書いてあること。「入」は収入、「出」は支出です。さらに、「何にリサイクルされるか」も書かれています。

一番処理コストが高い乾電池は、119.8円/kgのコストに。日本で唯一の水銀リサイクル施設がある北海道までの輸送コストが大きいそうです。

宿泊者の「ゼロ・ウェイスト・アクション」

ツアーから戻ると、ホテルの部屋に行く前に、宿泊者が参加するゼロ・ウェイスト・アクションの説明がありました。① 滞在中に使う石鹸の量を自分で考えて、カットする

「2泊3日で使う量ってこのくらいだよね」と思いながら、少なめに切ったつもり…。

② 滞在中に飲むコーヒーとお茶の量を自分で考えて、決める

コーヒー好きなので普段なら1日3~4杯ですが、2人×4杯×2日=16杯と言うと引かれそうなので、4杯分お願いしました。左は徳島名物の晩茶2杯分。

③ 滞在中のゴミを分別する

6分別して、チェックアウト時に収集所でさらに細かく分けます。

そしていざ、宿泊する部屋へ向かいます。
続きは後半へ!

・HOTELY WHYの建物にはどんな工夫が施されているのか?
・町の中で見つけた、住民と一緒にゼロ・ウェイストに取り組むための工夫とは?
・実証実験の場としてのHOTEL WHY
・家で何ができる?

などなど、まだまだ書きたいことがたくさんありますので、読んでいただけると嬉しいです!

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