ファンドに背中を押されて始まる等身大のサステナビリティ

2021 / 6 / 2 | 執筆者:EcoNetworks Editor

TSA※で「サステナビリティファンド」の運用が始まって間もなく4年目を迎えます。このファンドは、TSAのパートナー(会員)が自身や社会のサステナビリティにつながる活動をしたいときに、資金面から、その取り組みを応援しようというコンセプトで生まれた制度です。これまでどんなチャレンジが生まれてきたのでしょう? 改めて制度の仕組みを解説しながら、いくつか事例をご紹介します。

※TSA(Team Sustainability in Action):
ENWに関わるパートナーのプラットフォーム。サステナブルな働き方や暮らし方を志向する個人が集う、学びと実践の広場。
参考記事 サステナブルな価値を生み出す「広場」としてのTSA


執筆:小島 和子
生まれも育ちも東京のフリーランス。編集・執筆・出版プロデュースが得意。


自宅の庭整備からプチ起業まで

サステナビリティファンドの募集は、新年度(ENWの事業年度は10月〜翌9月)が始まる直前に行われています。過去1年に実施したもの、もしくは向こう1年で実施予定の「マイプロジェクト」を対象に、1万・3万・5万円の枠から自分で選んで申請します。1人あたり1枠の利用が原則ですが、1万円枠の場合は3枠まで申請できるという柔軟性を持たせています。

これまでサステナビリティファンドはどんな取り組みに生かされてきたのでしょうか。例えば、イギリスにあるシューマッハカレッジのショートコースに参加したり、韓国の生協事情を探る旅に出たりという海外遠征や、子連れでワーケーションに挑戦ノマドワークをしながら欧州を巡るといった、新しい働き方を探るもの、ほかにも自宅の庭に池を作る、コンパクトかつサステナブルに住まうための収容・家具を考えるといった、暮らし周りのサステナビリティを考えるものまで実にさまざまです。

ファンドを1つのきっかけとして、新しいビジネスの萌芽も生まれています。ENWで経理を担当している柳田 真樹子さんは、アフリカ・タンザニアの有機カカオ豆を使ったBean to barチョコレートを商品化し、少しずつ販売実績を重ねています。デザイナーの戸塚 晶子さんは2年にわたってファンドを利用し、国産の木材を生かした森のアクセサリーの試作品の開発と展示を行うことができました。製品の紹介用に作ったウェブサイトはこちらです。

チョコレートとカカオ

柳田さんが手がけている「藤野良品店」のbean to barチョコレート

アクセサリー写真

森のジュエリー「mori woodware」

金銭的サポートにとどまらないファンドの魅力

このファンドが生まれた背景には、ENWが事業を通して得た利益を、パートナーにできるだけ還元したいという思いがありました。そこで2018年に試験的に「充電ファンド」を立ち上げ、翌年から本格稼働させるため、名称を改めて「サステナビリティファンド」が誕生したという経緯があります。

ファンドの利用条件は2点だけ。取り組み内容が個人や社会のサステナビリティにつながることと、結果をみんなと共有することです。「何がサステナビリティにつながるのか」を判断するのは申請者自身。つまり、サステナビリティに向けて何をしたいのかを考えるところから、既に取り組みが始まっていると言えそうです。これまでのところ、申請したパートナー全員がファンドを得ており、運営チームが「審査で落とす」といった例はありません。

最大でも5万円という額だけを見れば、狭義の「ファンド」としては決して十分ではないかもしれません。でもこのファンドの意義は、単なる金銭的サポートとは違うところにありそうです。

2019年からファンド事務局の一員として運営を担当している曽我 美穂さんは、このファンドのよさは「ちょっと挑戦してみたいことがあるときに、背中を押してくれるところ」だと語ります。曽我さん自身もファンドの利用者で、今まさにチャレンジ中なのは、学生時代から大好きだった先住民族の文化に関する情報発信です。「ファンドを使ったことがいい意味でのプレッシャーになって、週に1本は記事を書くというペースを維持できています。この発信をきっかけに、別のウェブ媒体でアイヌ文化についてのコラムを書く機会にも恵まれました」

また、気候変動関連のワークショップに泊りがけで参加した翻訳者の五頭 美知さんは、学んだ内容そのものに加え、サステナビリティに配慮したワークショップ運営の視点、さらに子どもを置いて久しぶりの出張に出る工夫という観点からも、TSAパートナーに共有してくれました。子どもが小さいうちは、新しい学びといった「充電」の時間を取りづらいかもしれません。でも、家族の協力を得ながら頑張っている仲間の報告を聞くと、「私にもできるかも!」という気持ちになる人も多いでしょう。

サステナビリティファンドを1つのプロジェクトとして見た場合、その「成果」は何で測ればいいのでしょうか。サステナビリティを志向することに、明確な「数値目標」を掲げられるわけではないでしょう。それでも曽我さんは「雫の輪がどんどん広がっている!」と確かな手応えを感じています。ここで言う「雫」とは、ENWのミッション「『個』が輝くサステナブルな社会を実現するため、波を起こす一滴の雫になろう。」に出てくる、あの「雫」です。一人ひとりの「雫」はごく小さなものでも、それが集まれば、きっと波を起こすことができる。そんな予感を感じさせるのだと言います。

しずく

プロセスの見える化で「みんなのファンド」に

今後の展開についてファンド事務局では、プロセスの可視化を進めたいと考えています。ファンド利用に際しては、取り組みが一段落したところで、その内容をENWのウェブサイトやTSAパートナー向けのプラットフォーム、FBグループなどで共有してもらっています。そのため、ファンドを利用していないパートナーからも「結果」は見えるのですが、逆にいえば途中経過は分かりません。取り組みの途中にどんな発見があり、ときに想定外のトラブルに見舞われながらも(?)初志貫徹を目指して奮闘しているのか。そんな様子も知ることができれば、ファンドを利用していないパートナーも含め、自然に応援したくなってしまいそうです。

かくいう筆者も、本記事執筆のお声がけがなければ、「サステナビリティファンド? なんかそういう制度もあるみたいねー」という程度の理解に留まっていたかもしれません。実は昨年の秋、ファンドを利用して果樹園の「オーナー」になった新海 美保さんから、リンゴのおすそ分けをいただきました。ギュッと凝縮された秋の味覚を堪能して大満足&大感謝! だったことは確かです。その際に、きっとファンドの説明もいただいたはずなのに、なぜかあまり覚えておらず…ということを今、猛省しているのでした。

リンゴの集合写真

わが家に到着したてのリンゴたち。美味しくいただく前の集合写真(?)です。

こんな経験からも、ぜひ、新たなチャレンジをしている方の「メイキング・オブ・○○」の部分も伺えたら楽しそう! と思います。そうすれば、今よりさらに多くのパートナーが「一滴の雫」に近づく機会が増えるのではないでしょうか。「プロセスを共有することで、『みんなのファンド』という雰囲気にできたら」と曽我さんも期待しています。

事務局では今まさに、2021年度の運用について詳細を詰めている真っ最中です。自分の学びや実践を深めるだけでなく、パートナー仲間のチャレンジから新たな気づきや発見が得られるのが魅力のサステナビリティファンド。今年はどんな進化を遂げて展開されるのか楽しみです。私も何か挑戦してみたくなりました。

Photo by m-mix via photo AC

 

 

 

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