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岩村 千明さん Chiaki Iwamura
紡ぐ言葉で誰かの支えや後押しになりたい
米国の大学を卒業し外資系企業の広報を務めた後ライターとして独立、現在はエコネットワークス(ENW)でプロジェクト運営や執筆、社内外コミュニケーションの促進を担当している岩村さん。「伝える」ことにかける想いをお聞きしました。
-これまでどのようなお仕事をされてきましたか?
大学卒業後、新卒で外資系メーカーに入社し、コーポレートコミュニケーション(広報)部で約7年間働きました。文章を書くことや英語を使うことができる仕事だったのが決め手です。
社内報の制作や、海外の関連ニュースの翻訳、社内イベントの運営、社外向けSNSの運用などを幅広く担当。本社がアルゼンチンにあり上司がイタリア人という 環境で、日本と海外の各拠点や事務所と現場、経営陣と従業員など社内の架け橋になるような仕事に大きなやりがいを感じていました。
ただ定時で上がれることがほとんどなく、また週末は疲れて外出もままならない、そんな働き方に疑問を覚えるようになりました。現地時間に合わせて深夜のオンライン会議に出席していた上司や同僚の姿に自分の将来像を重ねられず、「より仕事と暮らしのバランスがとれた生活を送りたい」と考えるようになったのです。それで、地元に戻り、フリーランスのライターとして働き始める決意をしました。
-ライターという仕事を選んだ背景や理由を教えてください。
子どもの頃から書くことが好きだったのに加え、留学時代の体験が、この道に進むきっかけになりました。
3年次に編入した米国インディアナ州の大学で、学業以外にも何かチャレンジしたいと考え始めたのが「学内新聞」での記者の仕事です。いずれは「書く」ことを仕事にしたいとは思っていたのですが、この時に取材の楽しさを実感しました。
-なるほど。その想いが企業広報、そしてその後のライターの仕事につながっていったのですね。
はい。広報として働いていた時も、特に楽しかったのは従業員への取材でした。累計で数百人に話を聞き、こういう仕事を続けたいと思っていました。
-フリーランスのライターになってからは、どんな活動をされていたのですか? ENWとの出会いも教えてください。
退職後も、前職の広報の仕事を委託業務として続けていました。一方で、環境関連の専門誌の記事執筆や地域で発行されているフリーペーパーの校正など少しずつ仕事の幅を広げていきました。
ENWに出会ったのは、フリーになって7年目の2021年のことです。その数年前に子どもが生まれ、それまでに経験したことがない様々な葛藤に直面し、自分自身の生き方を見つめ直していた時期でした。
-どんな葛藤があったのですか?
結婚した直後から「子どもを産むのは当たり前」という視点で周囲から話をされることに違和感がありました。さらに、出産後は「2人目は?」と聞かれることが多く、「私たちは息子がいるだけで十分幸せなのになぜ?」と疑問を持つようになりました。また、専業主婦の友人に「子どもを保育園に預けるなんてかわいそう」と言われてショックを受けました。こういった体験が積み重なり「もう少し、それぞれがお互いの大事にしたい価値観を尊重しながら生きられたらいいのに」と思うようになったのです。
こうした葛藤を経て、私は人の価値観やジェンダーの問題などに関心があることを認識しました。そんな時、見つけたのが、ENWのウェブサイトに掲載されていたジェンダー関連の記事でした。当時の自分の考え方より、1歩、2歩先を行く視点に惹かれ、すぐにメルマガに登録し、読むたびにファンになっていきました。その頃には息子が3歳になっており、時間に少し余裕を持てるようになっていましたので個人セッションに申し込み、今に至ります。
ENWとご一緒するようになって1~2ヵ月後に参加した、多様性に関する勉強会もよく覚えています。この勉強会を通じて、性別や人種、身体的特徴などに関連する多様性の受容については、人権(権利の侵害)の観点から理解し向き合うべきだということを改めて認識し、そうした姿勢で社会に働きかけているENWと今後もご一緒していきたい気持ちが強まりました。
働き方に関しても、プロ集団として専門性を生かした仕事をしながら自身の暮らしも大切にしている仕事仲間たちの姿勢に強く共感し、自分もそうありたいと思うようになりました。
-普段はENWでどんなお仕事をしていますか?
現在は、主に企業のサステナビリティレポートの制作支援やENWの社内外のコミュニケーションを担当しています。サステナビリティレポートの制作ではENWが企画から取材・文章作成、英訳まで幅広く手がけており、調査・分析、コンテンツ、言語、デザインと事業横断で結成されるチームで働く醍醐味を感じています。
コミュニケーション関連の業務ではリモートワークを基本とした社内コミュニケーションのさらなる活性化と、参加者がより深く関われる仕組みづくりや社外への発信を行っています。
-プロジェクトマネジメントやライティングをする上で、どんなことを心がけていますか? 大切にしているポイントは?
プロジェクトのマネジメントでは、チームメンバーやお客さまがスムーズに仕事を進められるよう管理面を整えることに力を注いでいます。特に、サステナビリティレポートなどボリュームの大きな案件では、目の前のタスクに追われてしまいがちなので、少し先回りをして次のステップが進めやすいような準備、提案を行うよう心がけています。
ライターとしては、「心で聴いた声を体温のある言葉に」と「声なき想いをすくいあげ、あなたへの物語を紡ぐ」の2つをテーマに活動しています。
取材では「相手の核となる価値観を引き出せれば」と、いつも考えています。その上で言葉の奥にある感情も拾い上げ、体温の伝わる文章にすることを目指しています。また、取材対象者でさえも気づかないような「声なき想い」をすくいあげ、言葉を紡ぐことで、想いの持ち主だけでなく、同じような問題に直面している人の気づきや解決策につながればと思っています。
-今はどちらにお住まいですか?オフの過ごし方は?
浜名湖の西側に位置する、静岡県湖西市に住んでいます。休みの日にはよく5歳の息子と夫、それに友人や自分の両親を交えて遊びに出かけています。私は生まれも育ちも湖西で、子どもの頃は「ここには何もない」と感じたこともありましたが、アンテナを張っていると様々なイベントがあり、自然も豊かで良い場所だと実感しています。
もともとインドア派で、休みの日はずっと読書していても苦にならないタイプなので、子どもが私の世界を広げてくれていると感じます。
-サステナブルな働き方・暮らし方のために大切にしていることは?
時間や脳内に「余白を持つこと」です。良いものを生み出すためには、インプットを行うための余白が必要だと考え、優先順位を明確にしながら意識的に余白をつくるようにしています。また、仕事で頭がいっぱいになると子どもの声が入ってこなくなるので、しっかり聴ける状態でいられるよう心がけています。朝は絵本を読んでから登園し、帰宅後はバッティングの練習をして……といった余白によって生まれる子どもとのかけがえのない時間を大切にしていきたいと考えています。
-これからチャレンジしたいことや今後の夢を教えてください。
ライターとしての自分の軸は、一人ひとりが「自分」の大切なものを大切にできる、「自分」を生きられるきっかけになるような発信をすることです。子どもやその先の世代がより生きやすい社会をつくるために人権、DE&I、働き方などの側面から変革を促すきっかけになる記事を書いていきたいです。
また、サステナブルな社会や働き方の実現に向けたENWの考え方や取り組みを、ここで働く人たちの声を通じて、社外にもっと発信していきたいと考えています。
プライベートでは、今エッセイ展を企画しており、「いつかは小説を書きたい」という夢があります。仕事では企業を対象としたアプローチが多いので、人権やDE&Iなどの観点から日常で抱く違和感やそれを乗り越えるきっかけになった言葉や経験を、違った層の人たちに届けることができればと思っています。私の紡ぐ言葉が誰かの支えや後押しになることを願って、これからも書き続けていきたいです。(取材日:2023/10/18)
岩村 千明
米国の大学を卒業後、外資系メーカーに入社し広報として数々の取材・記事制作・翻訳を手がける。2015年にライターとして独立。2021年からエコネットワークスにかかわるようになり、企業のサステナビリティレポートの制作支援を行うほか、社内外コミュニケーションを担当。