ENW Lab. ENWラボ
韓国・生協事情~ハンサリムの活動を中心に~
「海外のエコ事情を、現地取材で感じ取り、紹介したい!」
10年ほど前に「エコライター」としてのキャリアをスタートして以来、エコなグッズの紹介記事を多く書いています。当然、日本のお店やブランド、商品にはある程度詳しくなってきます。そうして、だんだんと「海外はどうなんだろう? 自分の目で確かめたい」という思いが強くなってきました。でも、英語教室の仕事もあるし、下の子がまだ小さいし、となかなか時間が捻出できません。そこで思い切って弾丸取材旅行を決行することに。2018年12月の師走のさなか、0泊2日のハードなスケジュールの旅です。
行先に選んだのは韓国。移動距離が短いことと、友人が、現地に住み、日本人唯一の理事として韓国のハンサリム生活協同組合で働いていたからです。
行く前は「久しぶりの海外だし、0泊だし、体力は持つのか」「短い時間でしっかり取材できるのか」など少し不安がありましたが、友人の素晴らしい案内のおかげもあって、しっかり現地の生協事情を知ることができました。
韓国の生協事情
土曜の夜9時頃に自宅を出発し、日曜の深夜1時55分、羽田発の飛行機で仁川空港に行き、そこから友人の住む水原(スウォン)市に長距離バスで1時間ほどかけて移動。朝9時ごろに、友人である鈴木 あゆみさんと合流しました。最初に、歩いて最初の目的地ハンサリム生協に向かいながら、韓国の生協事情を聞きました。

韓国語がネイティブ並みに堪能な鈴木 亜由美さん。
大学時代はエコサークルで一緒に活動していました。
韓国の主要な生協は、ハンサリム生協とi-coop、ドゥレ生協の3つ。それぞれ独自の運営をしていますが、どの生協も地球、人にやさしい安全・安心な品物を会員向けに売っている点は同じです。
鈴木さんは、生協によって「お菓子がおいしい」「子ども向けの食材が多い」など特徴が少しずつ違うので、3つの生協すべての会員になり、買い物をしているとのことです。今回も3つすべてを案内していただきましたが、特に鈴木さんがかかわりの深い「ハンサリム」について詳しくレポートします。
30年以上の歴史がある「ハンサリム」
ハンサリム生活協同組合は、1988年にスタート。全国に154の店舗があり(2013年時点)、宅配もおこなっています。自然を生かし、生命を大事にする思いで食べものを作る「生産者」と、その心が込められた物品を理解し信じて利用する「消費者」がいっしょになって結成しました。日本からも視察が訪れる、世界的にも注目されている生協で、日本語のウェブサイトもあります。
鈴木さんは2012年にパートナーの祖国である韓国に移住。その後すぐにハンサリム生協に加入しました。子育てしながらも活動に積極的に参加し、関係者が東京を訪れた際は千葉と東京にある生活クラブ生協の視察の手配や通訳を担当。2017年からは、水原市のハンサリムの理事(地域の組合員の代表)として働いています。

こちらがハンサリムのお店。店内にはお米、雑穀、お酒、化粧品などが所狭しと、並んでいました。
生協のお店の横にあった、面白い空間
鈴木さんの所属している水原市のハンサリムのお店の隣には「緑の書房」と呼ばれる会員が自由に使えるスペースがありました。鈴木さんの理事としての主な仕事の1つが、この空間でおこなわれるイベントの企画です。「売っているものの試食会はもちろん、絵本の読み聞かせや映画上映会、お料理の会、環境問題の学習会、刺繍や編み物の会など様々なイベントをおこなっています。小さな集まりですが、回を重ねるたびに地域の人たちのつながりが深まっているのを感じます。私自身も、ここで韓国の食材の使い方をたくさん学んでいますよ」(鈴木さん)。

「緑の書房」の中の様子。日本の生協でもこういう取り組みがあるといいなあ、と話を聞きながら感じました。
たくさん、いい買い物をしました!
韓国・水原市で訪れた生協の店は、どの店も面積はそんなに広くはないものの、木をふんだんにつかった落ち着く雰囲気の空間で、居心地が良かったです。全くハングルが読めない私も「ここのお店のものを買えば、安心だな」という気持ちになりました。そして、たくさんのものを買い込んでしまいました(笑)。

ハンサリムで買った石鹸、椿油とハンドクリームです。椿油は日本円で1500円程度ですが、女優さんも使っている品で、つけると肌がしっとりします。ハンドクリームもべたつかずさらっとした付け心地。ゼラニウム、ラベンダー、ベルガモットなどのハーブのオイルが入っており、つけるたびに良い香りに癒されます。

食材いろいろ。韓国のりやアマドコロ茶、かりん茶、だし、えごま油、雑穀などを買いました。
どれも素材の良さがふんだんに生かされた、塩味ひかえめなおいしい食材ばかり。
お茶は、飲むたびに体が喜んでいるなあ、と感じます。

お菓子いろいろ。手前にある長方形の箱は羊羹です。クッキーや伝統的なお菓子、飴なども買いました。
どれも甘さ控えめでおいしかったです。
こんなに素敵なものがたくさん買えるなら、さぞや町で生協は人気なのだろう…と思い、鈴木さんに聞いてみると、意外な答えが。
「生協を使っている人は、近所のママ友でもそんなに見かけないんですよ。水原市の人口は125万人ですが、そのうち生協を利用しているのはまだ2パーセントくらいなので、そんなに一般的ではないです。組合員にはなっているものの、残念ながら大手スーパーを主な買い物先にしている人も多いです。もっと普及させていきたいです。」
良い買い物ができ、人のつながりをぐっと深めることができる、韓国の生協。とはいえ、日本の生協も負けていません。最近では大家族向けだけでなく、2人暮らし向けのカタログを新たに作って、小ロット(量が少なめ)の商品も紹介しています。また、地元ならではの商品や農作物のカタログを作って地産地消に力を入れている生協もたくさんあります。こういった生協で買い物をすることは、自分が暮らす地域の農業生産者や企業の応援につながります。今後は、私も普段の生活でもっと生協を利用し、盛り上げていきたいと思います。
(撮影・執筆:曽我 美穂)