ENW Lab.
「金継ぎ」で伝えたい。モノを捨てずに蘇らせるという選択
エコネットワークス(ENW)が運営するコミュニティ、TSAでは「サステナビリティファンド」という仕組みを設けています。TSAに参加するパートナーが自身や社会のサステナビリティにつながる活動をしたいときに、資金面から取り組みを応援する制度です。
新海 美保さんは、ファンドを活用し「いろいろリメイクプロジェクト」を実施。器の金継ぎなどに挑戦しました。
執筆:新海 美保
長野県在住のライター、エディター。
我が家には色褪せてしまった服や欠けた食器、ダンボール・紙類がタンスや戸棚に眠っていましたが、「ゴミ」にしたくないという思いがあってなかなか捨てられずにいました。そこでサステナビリティファンドを活用して、服や食器、古紙などを生き返らせる取り組みをやってみました。題して「いろいろリメイクプロジェクト」です。器のリメイクを中心に、ご報告します。
「人も器も不完全だからこそ美しい」
金継ぎとは、器の割れや欠け、ヒビなどの破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で修復する伝統的な技法。室町時代の茶の湯の頃から、金継ぎをして器をきれいに修理するようになったと言われ、金継ぎして直した部分を「景色(けしき)」と呼んで愛でていたそうです。
一般社団法人日本金継ぎ協会によると「傷跡を隠すのではなく個性として受け入れ、より輝いていける価値観」こそが、金継ぎだそうです。人も器も不完全だからこそ美しい、というメッセージに感銘を受けました。
金継ぎラウンジのスターターキット
今回は自力でやれる方法を探し、大阪の陶芸教室「金継ぎラウンジ」が販売している「簡単金継ぎキット(スターターキット)」を購入しました。
袋の中には、面相筆、絵皿、紙やすり、エポキシ接着剤、エポキシパテ、金粉(真鍮粉)、テレピン油、合成樹脂などが入っています。本来なら、漆の木から採取した「生漆(きうるし)」をはじめ、漆の塗面の研磨に使う「砥粉(とのこ)」や水性塗料に色合いを調整したい時に混ぜる「弁柄粉(べんがらこ)」なども使うようですが、個人で材料をそろえるのはなかなか大変なので、「まずはやれる範囲で」という思いでこちらを購入しました。
キットに同封されていた説明書は、イラストつきでとてもシンプル。初めてでも分かりやすく、修復の工程が「つなげる」「みがく」「ぬる」の3ステップで紹介されていました。
次の目標は「本格的に学ぶ」こと
「金継ぎ」は、「金」で継ぐのだと思っていましたが、実はそうではなく、ほぼ漆で継いで修復しており、金は最後の仕上げのときにだけ使うそうです。漆は天然素材で耐久性も高く、食べ物を入れる器に使用しても安心です。
ちなみに、今回私が使ったセットでは漆も金も使っておらず、器の割れたところは接着剤やパテで接着し、その上に真鍮粉(銅と鉛を掛け合わせた金粉)で塗っています。素材も技術もアマチュアで、本格的にやっている方々に比べたら天と地の差かもしれませんが、ひとまずは「修復してもう一度使える」状態にはなりました。次のステップとして、本格的に学びたいという意欲も湧いてきました。
モノにあふれた世の中だけど‥‥‥
このプロジェクトを始めたきっかけは、娘(6歳)の「壊れちゃったから新しいものを買って!」という発言です。何度かこの言葉を聞き、「親がモノを大切にする姿勢を見せなければ」と思うようになりました。モノにあふれた世の中でも「使えるものは最後まで使う」という昔から受け継いできた習慣を子どもに伝えなければ、という焦りがありました。
「子どもと一緒に」を心がけながら実践した初めての金継ぎは、他の人に見せるのはちょっと恥ずかしいくらいのアマチュア品です。でも、壊れてしまった「ゴミ」を娘と一緒に蘇らせる経験ができたことは、とても有意義でした。私の思いが子どもに伝わっているかどうか、実際のところは分かりませんが、一度はバラバラになったカップにもう一度お湯を注ぐ瞬間の、娘の嬉しそうな顔が忘れられません。
この他にも、やぶれたズボンの膝を当て布で修復したり、リュックのファスナーを直したり、段ボールでゴミ箱を作ったり、 さまざまなリメイクに挑戦しています。
ファンドの後押しを受けてスタートした「リメイクプロジェクト」。とても小さな取り組みですが、これからも楽しみながら地道に続けていきたいです。