「国産」だけでクリーンさを訴求? まやかしのない情報開示を

情報検索をしている消費者

(Photo by maru54 via AdobeStock)

買い物をするとき、商品パッケージに「国産」「国内で製造しています」「国内で職人がつくっています」など、「国産」をアピールする言葉をよく見かけます。国産・国内製造=安心・安全、高品質、クリーンといったイメージを漠然と訴求するものです。しかし先日、国内製造の商品を手に取りながら私の頭をよぎったのは、深刻な人権侵害の問題を抱える外国人技能実習制度でした。

「外国人技能実習制度」に見る、国内の生産現場の課題

食品加工の現場

(Photo by あんみつ姫 via AdobeStock)

折しも、エコネットワークスが定期開催している「サステナビリティ推進担当者の交流会」で、先日「人権」をテーマに議論したところ、各社から危機感が示されたのが「外国人技能実習制度」でした。「外国人技能実習制度」の現状については、本サイトのこちらの記事でも発信していますが、劣悪な労働環境や暴行などの人権侵害があっても会社を変えることが原則できないなど、「現代の奴隷制度」とも言える深刻な課題があります。国際機関や米国政府などからも、人身取引や強制労働などの問題があると長年指摘されてきました(参考:外務省資料)。

制度導入から30年を経て、ようやくこの5月に、政府の有識者会議が制度の廃止を提言し、新たな制度への移行を求めた中間報告書を示しました。働く企業の変更も一定程度認める方向性や、実習生が直面する人権侵害やトラブルに対して是正や支援をすべき「監理団体」や「登録支援機関」への要件の厳格化などが示され、今秋には最終報告書が出される予定です。こうした課題がある中で、漠然と国産・国内製造をアピールすることには、大きなリスクがあります。

国産木材=エコ? 国産肉=いい環境で育てられている?

その他にも例えば、国産木材=エコという訴求もよく目にします。確かに、輸入木材を使用する場合に比べ、熱帯雨林の破壊やこれに伴う生物多様性の損失といったリスクの回避、輸送などに伴うCO2排出量の削減のほか、間伐材の利用など国内の森林管理といった観点からも、環境への負荷が低い側面はあります。他方、国内でも違法伐採が報告されており、国産木材だからエコとも言い切れないのが実態です。重要なのは、FSC認証をはじめサステナブルな方法で管理・調達された木材であるかどうかという点です。使用する国産木材が環境に良いと発信する場合、これを裏付ける適切な情報を開示する必要があります。

養鶏場の過密飼育の様子

日本の養鶏場における過密飼育 ©アニマルライツセンター

また、日本では、国産肉の品質や味に対する評価が高く、良い環境で育てられているというイメージがあります。しかし、昨年エコネットワークスで開催したアニマルウェルフェア(動物福祉)の専門家を招いた勉強会(レポートはこちら)では、日本の畜産動物の飼育環境は世界最低ランクであると報告がありました。過密飼育、サルモネラ菌の高い汚染率、過酷な品種改良、気絶なしの苦痛が多い屠畜方法など、国際的な水準からは非常に遅れた状況で、国産だから安心・安全、クリーンとは言えない実態があります。

消費者に伝えるべきは、国産かどうかだけでなく、それぞれの商品が具体的にどのような観点で、人びとや社会、環境にとって良いのかということです。

高まる「ウォッシュ」への規制 明確な情報開示と発信を

ここ数年、欧州を中心に「グリーンウォッシング(実態が伴わないにもかかわらず、環境に配慮しているように見せかけること)」に対する法規制が強化されています。オランダやオーストリア、ベルギー、ハンガリー、ノルウェー、英国などで、広告におけるサステナビリティの訴求に関するガイドラインが発行されたほか、2021年にはフランスでグリーンウォッシュとみなされた広告に対して、広告料の最大80%の罰金が課されるようになりました。フランスでは、カーボンニュートラルの訴求を規制する政令も交付されています。

サステナビリティに関する訴求においては、消費者が購入を決定するために必要な重要事項を、不明確であいまいな形で提示してはならず、客観的に理解できるための証拠・実証データをきちんと示すことが必要です。国産・国内製造にまつわる訴求においても、漠然と良いイメージをアピールするのではなく、明確な裏付けをもった情報開示と発信が求められているのではないでしょうか。そして、私たち消費者もまた、国産という言葉の向こうにどのような生産現場があるのか、しっかり見つめていくことが大切です。

宮原桃子 コンテンツプロジェクトマネージャー/ライター)

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