仏発の修理のしやすさラベル 1年を経ての成果と課題

欧州発のルール形成の動きには、サステナビリティ情報に関する開示指令(CSRD)や、人権・環境デュー・ディリジェンスの義務化に関する指令(CSDD)、環境・社会課題解決に貢献する経済活動の分類基準を提示するタクソノミーなど、様々な動きが近年起きており、動向が注視されています。

上記に挙げたもの以外では、消費者にサステナブルな選択を促すための情報提供を強化する一連の動きがあります。不公正な商業上の慣行に関するEU指令(UCPD)や消費者権利指令の改正案が2022年3月に発表され、グリーンウォッシュや製品の計画的陳腐化の規制強化が提案されています。いずれも日本では関心が十分に高まっていない領域で、強い規制もないため、日本企業はギャップに注意する必要があります。

リペアビリティ(修理のしやすさ)」に関する制度もその1つ。現在EUレベルで、修理のしやすさをスコアで評価・開示しようとする検討が進められています。

先行するフランスのRepairability Index

フランスでは2021年1月、修理のしやすさをスコアで評価し、消費者に情報提供することを義務付けるRepairability Indexがスタートしました。対象製品は横型洗濯機、スマートフォン、テレビ、ラップトップ、電動芝刈り機の5品目で、今年11月からは新たに縦型洗濯機、食洗機、高圧洗浄機、掃除機の4品目にも拡充されます。

評価は以下の5つ項目で行われ、企業は10点満点でのスコアを評価ラベルとして提示します(例:Microsoftが開示しているラップトップSurfaceのスコア)。

  1. 証拠資料:シリアルナンバー、分解図など
  2. 分解のしやすさ:最も消耗しやすい部品へのアクセスのしやすさ、修理に必要な道具の数など
  3. 修理用部品の入手しやすさ:主要部品の提供年数。特に消費者が自分で修理しやすいほど高得点
  4. 修理用部品の価格
  5. 個別項目:ソフトウェアのアップデート対応期間、情報の初期化等

1年を経ての成果と課題

法律が施行されて1年以上が経ち、成果と課題も見えてきました。計画的陳腐化に反対する市民団体によれば、成果の例として、サムスンなど修理マニュアルの提供を積極的に始めるといった動きが一部企業で見られることや、このインデックスの認知が過半数の国民に広がり購買時の判断基準に寄与していること。課題の例としては、スコアはメーカー自らが評価するため客観性に欠けることや、監視メカニズムが不足していることなどを指摘しています。

また欧州消費者機構(BEUC)からは、EUレベルでの制度設計への提案として、エコデザイン指令における最低要求事項の設定、店頭・インターネット上での購入時におけるスコアの明示的な表示や、消費者の正しい理解促進、保証期間を明示するラベルの導入などを挙げています。

なおフランスでは、このインデックスは2024年に長く使えるかどうかを評価するDurability Index(耐久性インデックス)へと拡充され、修理のしやすさは要素の1つとなります。

修理するよりも新しいものを買った方が、性能も良く、安く済むと言われて、修理を断念した経験が私は何回もあります。こうした仕組みがあれば、少なくとも購入時点で、修理のしやすさを製品の選択基準の1つとすることができます。家電量販店での店頭表示や商品比較サイトで、修理のしやすさや耐久性といった循環経済につながる項目での比較が可能となるよう、特にSDGsにコミットしている企業には取り組みを主導していただけることを期待します。

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(Photo by JESHOOTS.COM via Unsplash)

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