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Woke-washing 見せかけの「正義」
Woke-washingとは 定義と事例
グリーンウォッシュ、SDGsウォッシュなど、「○○ウォッシュ」への目が厳しくなり、特に環境面については欧米を中心に法規制化も進んでいます。これらに加え、最近 “woke-washing” という言葉を見かけることが増えてきました。Forbesのこちらの記事では、woke-washingについて次のように説明されています。
Woke-washing is a term used to define practices in business that provide the appearance of social consciousness without any of the substance.
(試訳:Woke-washingとは、中身が伴っていないにも関わらず、社会意識が高いように見せかける企業の取り組みを指す言葉)
wokeはwake(目が覚める)の過去分詞形で、形容詞としては「社会課題に対する意識が高いこと」を意味します。これに”-washing“をつけることで、実際は中身が伴っていないのに、イメージ向上や利益のために社会課題に積極的に取り組んでいる「ふり」をする様子を指す言葉になります。もともとは特に人種差別の文脈で使われることが多かった言葉ですが、徐々に使用範囲が広がり、現在はさまざまな社会課題に対して使われているようです。
例えばこちらの記事では、2019年1月に「ジェンダー平等」に関するキャンペーンで寄付金を集めるために販売されていたTシャツが、実は女性が最低賃金以下で働かされているバングラデシュのある工場で作られていたことがwoke-washingの事例として挙げられています。
企業に求められること
若い世代を中心に、環境や社会に配慮した製品・サービスを選ぶ「エシカル消費」を志向する人が増える中、自社をよく見せたいという想いが生まれるのは当然かもしれません。ただ、実際以上によく見せてしまうと、ユニリーバのアラン・ジョープCEOが言うように信頼を失ってしまいます。一方で、社会課題に対する自社のスタンスを何も示さなければ、「何もしていない」と批判されかねません。
「ウォッシュか否か」の境目は曖昧で、人によって意見が分かれることもたびたびあります。大切なのは、炎上を避けることではなく、声の小さな人々にも耳を傾けながら関心事やニーズを汲み取り、本質的な課題解決へのコミットメントを示すとともに、まだできていない部分や足りないところがあれば、そこも含めて透明に開示していくことなのではないかと思います。
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