進むルール整備 サステナビリティ発信の欧州最新動向

2021 / 11 / 30 | 執筆者:EcoNetworks Editor

世界中で企業のサステナビリティに関するコミュニケーションが広がりを見せる中、企業が発するメッセージや開示する情報について、正確な情報提供や透明性の観点からルールを整備する動きが特に欧州で進んでいます。投資家を対象とした非財務情報開示と、製品・サービスを購入する消費者に対する環境コミュニケーションにおける動向を紹介します。

欧州委員会で新CSRD案が採択

企業の非財務情報開示における直近の動きとしては、欧州委員会が2021年4月に新たなコーポレート・サステナビリティ・レポーティング・ダイレクティブ(企業持続可能性報告指令、CSRD)案を公表しました。新CSRDは2023年から適用予定で、現行のCSRDと比較し、主に以下の点において対象が拡大されています。

  • 対象企業:すべての大企業が対象となり(3つの規模要件のうち2つ以上を満たす企業)、対象企業数は従来の約1万社(EU域内)から約5万社に増加予定。中小企業に対してはプラス3年の猶予が与えられる。
  • 報告事項:
    ・ダブルマテリアリティ(環境・社会への企業活動による影響とサステナビリティ課題が企業にもたらす影響)を踏まえた報告
    ・サステナブル・ファイナンス開示規制(SFDR)やEUタクソノミー規制との整合性
  • 透明性:外部第三者機関による監査の義務化
  • その他追加項目:
    ・サプライチェーン全体におけるデュー・ディリジェンスプロセスの情報開示
    ・サステナビリティ関連リスクの強靭性(レジリエンス)や関連機会の特定
    ・無形資産(知的、人的、社会・関係性)に関する持続可能性
    ・中長期にわたる目標・リスク・機会についての定性的・定量的な報告

KPMGオランダが同国上場企業規模トップ25社に対して行ったギャップ分析では、すべての企業において新CSRDが求める基準と現在の開示内容にギャップがあった(特にダブルマテリアリティの領域において)との調査結果でした。今後EUで事業を展開する企業は、新しい基準に基づき現状の開示内容を見直していくことが求められます。


Photo by succo via pixabay

消費者に対するグリーンウォッシュ規制の強化

2021年8月にフランスではグリーンウォッシュや特定業種の広告掲載に関して法的に規制する内容を含む消費者コードの改正法気候レジリエンス法が採択されました。グリーンウォッシュと見なされた広告に対して直接的な制裁措置が行われ、広告料の最大80%の罰金が科される可能性があるほか、化石燃料の利用や特定の自動車車両の広告が今後禁止されていきます。

また、英国では2021年9月に同国競争市場庁(CMA)が新たに企業向けガイドライン「グリーンクレームコード」を発行しました。企業による環境訴求に関する最近のグローバルレビューCMAおよびオランダ消費者市場局が主導)で約500社のWebサイトをレビューした結果、これらの40%が誤解を招く可能性のある環境情報を投稿していることが判明し、欧州委員会と国内消費者当局によるウェブサイトのスクリーニングでも同様の傾向が見られたことから、包括的・広範囲を対象としたガイドラインが作成されました。主要原則では真実・正確・明確・公正な主張をし、虚偽や重要な情報の隠蔽をしないことに加え、製品・サービスのライフサイクル全体を考慮した主張を行うことが強調されています。

また、特に対策が進んでいる国・地域では、自主規制機関が独自の細則を提示している場合もあります。例えば、フランスの自主規制コードには「広告主のコミットメントに持続可能な開発の3つの柱(環境・社会・経済)が累積的に含まれていない場合は「サステナブル」であると主張をすることはできない」、「自動車を車道以外の自然環境の中で走らせることを禁止する」等、独自の基準が設けられています。過去にも、複数の大手自動車メーカーが砂浜や湖のある自然環境の中に自動車を配置した広告を掲載し、自主規制機関から規制違反と判断されました。

企業の非財務情報開示や環境コミュニケーションに関する規制は年々、内容が厳しくなるとともに、国際的な基準を確立する動きも進んでいます。投資家や消費者に情報を伝えるためのせっかくの努力が無駄にならないためにも、最新の公的規制・自主規制をしっかりと理解しておくことが非常に重要です。

(奥村彩佳/パートナー)

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