Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
「思考停止」を招きやすいSDGs その先の未来を示すコミュニケーションを

(Photo by bunditinay via Adobe Stock)
先日、中学生の息子が、「なんかSDGsにつながっているらしい」と友人から言われてもらったという非常食のパンを持って帰ってきました。「どういう風にSDGsにつながっているの?」と聞いても、首をかしげるばかり。その後、一緒に情報を見たり話し合ったりして、賞味期限をメールで通知するサービスが、食品ロス削減につながるというコンセプトだとわかりました。
SDGsロゴやアイコンで、思考停止に
「(よくわからないけれど)SDGsなんだって」というのは、彼ら中学生に限らず、よく耳にするフレーズです。製品やホームページなどにSDGsのロゴや目標アイコンが付いていれば、何となく地球や社会にいいらしいという印象は残るものの、そこで思考停止してしまい、具体的にどんな課題にどのように貢献しているかまでは追わなくなってしまうことが往々にしてあります。朝日新聞が行っている「第8回SDGs認知度調査 」では、SDGsという言葉を知っている人は7割を超える一方、SDGsの内容については「少し知っている」が約5割、「ほとんど知らない」が約3割となり、「特に取り組むことは考えていない」と答えた人も約5割に上りました。
これは一般消費者だけでなく、SDGsに取り組む企業の足元でも起きていることです。あるクライアント企業から、SDGsに関する従業員啓発のご相談があった時も、「会社の重要課題や戦略の中で、各取り組みをSDGs目標に紐づけて発信もしているが、多くの従業員は、実際には何がどのように貢献しているのか腹に落ちていない」という話をされていました。
かつての「地球にやさしい」と同じ運命に…?

(Photo by lovelyday12 via Adobe Stock)
この状況で思い浮かぶのは、かつてよく目にした「地球にやさしい」という言葉です(今も割とありますが)。まだサステナビリティという言葉も浸透していなかった時代に、地球環境への配慮に目を向けてもらうために、なるべく多くの人にわかりやすく伝える言葉として、初期のステージでは必要な言葉であったと思います。ただ、ふんわりと良いイメージは伝わるものの、何をどのように配慮しているかがわからないため、見た人を思考停止させやすく、いわゆる「グリーンウォッシュ※」が生じているケースもあります。特に近年は、グリーンウォッシュやSDGsウォッシュへの厳しい視線が広がっています。
※実態が伴っていないにも関わらず、環境に配慮しているように見せかけること
一方、SDGsは、より多くのアクターにアクションを起こしてもらい、着実に課題解決ができることを目指して、具体的に17のゴール・169のターゲット・232の指標を設定しています。本来は「地球にやさしい」とは異なり、細かく紐解いて、その取り組みがどんな課題にどう貢献しているのかを示すことができる・しやすいはずなのです。
丁寧な分析と、「その先の未来」を示すコミュニケーションを
多くの企業は、自社の戦略や重要課題が、どのようにSDGs目標と紐づいているかを分析・マッピングし、発信しています。その際には、ゴールだけでなくその下の細かい「ターゲット」、さらにはKPIとなる「指標」の単位で、より丁寧な分析や達成状況のフォローアップを行うことが大切です。そうすることで、関連する目標が示すどんな課題に取り組み、どのような成果を生んでいるかを、具体的に伝えていくことができます。
さらに重要なことは、SDGsに留まらない、会社として実現したい社会・未来の姿を発信することです。SDGsは、今ある世界の課題やなすべきことを示すものの一つではありますが、それが最終ゴールではありません。達成期限まで9年を切る中、企業が「パーパスとしてどんな課題を解決し、どんな社会を実現しようとしているのか」を示し、「SDGsのその先」を示していくことが、SDGsで思考停止しないコミュニケーションを生んでいくのではないでしょうか。
(宮原桃子 コンテンツプロジェクトマネージャー/ライター)
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