Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
Solid=「確かな」? ~イメージを捉えて訳す~
Photo:”Journey into the unknown aka The Mist” by TimOve
「確かな」、「しっかりとした」といった意味の形容詞solid。
エコネットワークスで翻訳をご支援する機会が多い企業の報告でも、solid corporate governance、solid market share、solid managementなどといった使われ方をよく見かけます。
もちろん、ビジネス以外でも広く使われる表現で、例えばNew York Timesのコラムでは次のような表現も見つけました。
Trumpism turned America’s lagging regions solid red, but the backlash against Trumpism has turned its growing regions solid blue.
(試訳:トランプ主義は、遅れをとる地域で共和党支持を確かなものとしたが、トランプ主義への反発は、成長を続ける地域で民主党支持を確かなものにした。)
改めて英英辞典を調べてみると、実にさまざまな定義が載っています(Collins English Dictionary):
– A solid object or mass does not have a space inside it, or holes or gaps in it.
– A structure that is solid is strong and is not likely to collapse or fall over.
– Solid evidence or information is reliable because it is based on facts.
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上に挙げたような例文と照らし合わせながら、定義をひとつひとつ丁寧に見ていくと、
“中身が詰まっている”、“しっかりとした土台の上に築き上げたもの”、だから“簡単には崩れない信頼できるもの”という具合に、さまざまな意味を持つに至った流れが理解でき、その結果、頭の中にsolidの持つイメージが出来上がります。
そのイメージができていれば、「確かな」、「しっかりした」以外にも、たとえば「厚みのある」、「中身のともなった」といった他の訳も候補として考えられるかもしれません。
似た意味を持つ他の表現として、reliableやsoundなどもありますが、やはりそこは似て非なるもの。
こまめに英英辞典を調べるなどして、それぞれの表現が持つ個性を理解した上で適宜訳し分ける必要があります。
地道な作業ではありますが、原文ありきの翻訳では特に避けられない道ですし、こういうところにこそ、翻訳の醍醐味を感じるのです。