括弧類は強調に使わない【 】「 」“ ”

2024 / 1 / 30 | カテゴリー: | 執筆者:Yasuko Sato

(Photo by u_zscsfn7pja via Pixabay)

日本語でも英語でも様々な括弧が使われますが、日本語と英語の括弧は意味が異なることが多く、訳すときにどうするか迷うことも少なくありません。今日は特に【隅付き括弧】、「かぎ括弧」、“コーテーションマーク”について掘り下げます。

英語の括弧は役割が決まっている

日本語で小見出しを目立たせるためによく使われる【隅付き括弧】は、英語フォントには存在しません。では、英語ではどう表現すればよいのでしょうか?見出しや小見出しであれば太字かフォントを大きくするのが一般的です。

また、日本語でよく見かける<山括弧(angle brackets)> や [大括弧(square brackets)] などは、英訳する際に半角フォントの括弧に置き換えればいいと考えたくなるところですが、英語の山括弧や大括弧は用途がある程度決まっており、小見出しに使うのは違和感があります。

英語では、山括弧は主に、数式やプログラミング、外国語の発話であることを示すときに使われます。また、URLやEメールアドレスを表記するときにも使われていますが、シカゴマニュアル[6.104]によれば、この使い方は推奨されていません。概して、山括弧は一般的な文書では滅多に使われません。また、大括弧は、例えば、引用文に変更を加えたり、訳者が原文にない内容を補足したりするときによく使われます。

英語で強調を表すには

英語では括弧に強調の意味はありません。英語で強調を表現するには、イタリック(斜体)、太字、下線のいずれかを使います。この3つのうち、最も適切かつ一般的なのはイタリックです。本文中で強調したい言葉は、イタリックを第一選択とするのがよさそうです。

日本語の「 」は、英語で“ ”とは限らない

日本語のかぎ括弧は、多くの場合、英語ではコーテーションマークに置き換えられます。引用や会話であれば、それでよいのですが、単純に置き換えられないケースもあります。特に知っておく必要があるのは、ある言葉を一般的な意味と異なる意味で使うときや、皮肉であることを示すときに、コーテーションマークが使われるということです。

次の2つの文には、どのような意味の違いがあるでしょうか?

They pursue peace on many fronts.
They pursue “peace” on many fronts.

1つ目の文は「彼らは様々な局面で平和を模索している」という意味です。一方、2つ目の文は、彼らの言う「平和」は、私たちが一般的にイメージする「平和」とは異なっていて、見せかけや偽物の平和であるというニュアンスが含まれます。あるいは、暴力を使う彼らの「平和」を皮肉っている可能性もあります。これでは全く逆の意味になってしまいます。平和を強調したいのであればpeaceをイタリックにするのが適切です。

読み手は全体の文脈から意味を判断しますので、こうした表記の間違いが大きな誤解を招くことはあまりないと思いますが、これらを適切に使い分けることで、文書の質が上がり、読みやすさもアップするはずです。

まとめ

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