ミティゲーション・ヒエラルキー 生物多様性を保全するための考え方

2024 / 3 / 12 | カテゴリー: | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

(Photo by Alexas_Fotos via Unsplash)

GRI 101: Biodiversity 2024」が今年1月に公開されました。2023年9月に公表された「自然関連財務情報開示 タスクフォース(TNFD)の提言」の日本語版も2月初めごろに公開され、自然関連の情報開示に関する基準や枠組みが系統だった形で整備されています。そのような資料を読み込む中で、「ミティゲーション・ヒエラルキー」の考え方が重要な位置を占めていましたので、今回まとめてみます。

ミティゲーション・ヒエラルキーとは

異業種間生物多様性イニシアティブ(CSBI)の「A cross-sector guide for implementing the Mitigation Hierarchy」によれば、生物多様性や生態系の保全でのミティゲーション・ヒエラルキーは、開発プロジェクトが生物多様性と生態系サービス(BES)に与えるマイナスのインパクトを、可能な限り軽減するための考え方です。回避最小化復元オフセットという4つの主要なステップを順に実施し、BESの保全のニーズと開発の優先順位のバランスをとるメカニズムを確立することで、自然資源の持続可能な管理を目指しています。

4つのステップを簡単に説明すると、以下のとおりです。

  • 生物多様性や生態系へのマイナスのインパクトに対して

    回避(Avoid):マイナスのインパクトを未然に防ぐ、あるいは完全に排除する

    最小化(Minimize):回避措置の実施後も残るマイナスのインパクトを最小限に抑える

    復元(Restore):マイナスのインパクトを受けた生態系を修復し、優先されるべき特定の機能や生物多様性の特徴をその生態系が取り戻すための措置
    *インパクト軽減の対象となる特定の生物多様性の特徴を確実に向上させなければならない

    オフセット(Offset):上記の措置後も残る重大なインパクトに対処するための最後の手段

組織の具体的な保全措置

GRI 101の開示事項 101-2 (生物多様性へのインパクトの管理)の手引きに、ミティゲーション・ヒエラルキーの詳しい説明や背景情報があります。具体的に組織のどのような行動が、どのステップに当てはまるのかが記載されていてわかりやすいので、以下にいくつか抜粋します。

回避:
・拠点の移転
・生物種の繁殖や移動を妨げないタイミングでの活動実施
・拠点の拡大を中止する決定

最小化:
・侵略的外来種の拡散防止
・生態学的回廊の設計
・組織の活動の影響を受けにくい地域に拠点を置く

復元・機能回復(GRI 101ではrestoration and rehabilitation):
・地形の安定化
・土地の復元

オフセット
・炭素の回収・貯留
・社会的・文化的便益をもたらす
・非在来樹種を在来樹種に置き換える

ミティゲーション・ヒエラルキーで重要なのは、インパクトを回避することを最優先に考える点です。例として挙げられている拠点の拡大を中止する決定は、組織にとって重い決断です。それでも、自然生態系に致命的な影響をもたらし、生態系の崩壊につながる、その結果としてその土地で暮らす人々の暮らしの崩壊につながることを避けるには、必要となる場合もあるでしょう。

どうやったら回避できるかを考え抜く。GRIスタンダードやTNFDの提言に沿った活動や情報開示が進むことで、その姿勢が定着することを願ってやみません。

※記事内の和訳はEcoNetworksによる仮訳です。

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