食品廃棄物による環境負荷とは? 削減に向けた海外の取り組み

2023 / 11 / 1 | カテゴリー: | 執筆者:Shiho Funahara

(Photo by photo AC via kimtoru)

日本では年間で約2,400万トンの生ごみなどの食品廃棄物が排出されています。これらは燃えるごみとして回収され、その後焼却処分されるのが一般的です。しかし、昨今、生ごみなどの食品廃棄物によって生じる環境への影響が懸念されています。

食品廃棄物による環境への影響

生ごみは80%~90%が水分であることから、焼却する場合、大量の化石燃料を必要とし、輸送時以外にも、多くのCO2を排出します。WWFの報告書「Driven to Waste」によると、世界で年間に排出されるCO2のうち約10%を食品廃棄物が占めており、これは米国と欧州で自動車が1年間に排出する量のほぼ2倍に相当します。

また、その他の処理方法として埋め立て処理も諸外国では多く用いられています。しかし、この方法も、処理後にCO2より強い温室効果を持つとも言われるメタンガスが大量に発生することから、同様に環境への影響が懸念されています。

世界で高まる食品廃棄物による環境負荷削減への動き

2022年のCOP26では、これらのメタン排出を抑制しようという「Global Methane Pledge」が出されました。その他、気候変動対策非政府組織WRAPの報告書によると、2023年のCOP27気候サミット前に提出されたNDC(自国の温室効果ガスの排出削減目標)の中で、9カ国(中国、UEA、イギリス、アイスランドなど)が食品廃棄物の削減にコミットメントを示しています。中でもUEAは「2030年までに食品廃棄物を50%削減」という具体的な削減目標を打ち出しています。

環境負荷削減に向けた海外の取り組み事情

その他の国々でも生ごみを有効活用し環境負荷を削減するための様々な取り組みが行われています。

・ソウル

韓国は世界でも有数の生ごみリサイクル国でリサイクル率は95%に達します。2005年に生ごみの埋立処分の禁止、分別義務を国民に課す「生ごみ直接埋立禁止法」が制定され、2013年には生ごみのコンポスト化が義務化されました。
ソウルでは1998年から生ごみの分別収集が実施されており、収集した生ごみを100%再利用し、年間約45万トンの温室効果ガスの削減に成功しています。

・ニューヨーク

2023年6月、市議会により有機廃棄物の埋め立て量削減のため、生ごみを通常のごみと分別することを義務付ける法案が承認されました。そして、同時に、各自治区に対しE-wasteリサイクルセンターと有機物回収センターを設置するよう要求を出すことも決定されました。

・台北

台北では、環境保護局が収集した生ごみを有機肥料に変え、一般市民にプレゼントするなど市民を巻き込んだ施策が展開されています。市民はオンラインで申し込みをすると、約10kgの肥料を受け取ることができる仕組みで、2023年6月に実施されたプレゼントキャンペーンでは合計5,500個の配布に対し、約19,700件の申し込みが報告されています。

企業の環境負荷削減に向けた取り組み

・I am Grounded社

オーストラリアのI am Ground社は、副産物として扱われ、その約91%が埋め立て処分されているコーヒーの実を食品用エキスに再利用することで、本来排出される1,660万トンのCO2の削減に取り組んでいます。

・Grow Local Greenwood Lake社

ニューヨーク州にあるローカルファーマーズマーケットGrow Local Greenwood Lake社は、住民が無料で利用できる堆肥化システムを設置しています。同取り組みは、回収した生ごみを微生物が分解し、環境に有害なガスを発生させないようにする試みです。

車や飛行機によるCO2排出量の多さは、高く認知されていますが、生ごみなどの食品廃棄物による環境への負荷は未だそれ程知られていません。日本においても、昨今、各自治体や企業で生ごみの分別化や食品廃棄物のアップサイクルなど様々な取り組みが進んでいますが、より一層の推進が必要です。そして、食品廃棄物のおよそ3割は家庭から排出されていると言われており、家庭ごみも決して無視できません。近頃、家庭でも、庭やベランダで手軽に始められる、「生ごみを堆肥に変える処理方法(コンポスト)」や「生ごみ処理機(キエーロ)」などの活用も増えてきています。行政による法整備や規制に加え、産・官・学・民がそれぞれの視点からできることを考え、一体となってさらなる取り組みを行っていくことが重要です。

(船原志保/アナリスト)

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