循環経済の実現に向けた中国の本気度

2018 / 3 / 8 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks

inverse of recycle symbol
photo by Hsing Wei

国内外のメディアで話題になっていた、
中国で昨年末に導入された廃棄物輸入規制をご存知でしょうか。

廃プラスチック(8品種)、未選別の古紙(1品種)、廃棄繊維原料(11品種)、
バナジウムスラグ(4品種)など4項目24種の固体廃棄物について、
海外からの輸入を禁止したものです。

国内の資源不足を解消するため、中国では80年代から、固形廃棄物を輸入し、
新たな原材料として再生利用する取り組みを積極的に進めてきました。

しかし2017年7月、固定廃棄物のなかに汚染物質や危険物質が
大量に混入しているのが見つかったとの理由から、
再生資源輸入禁止計画をWTOに通知。同12月末に輸入禁止策が施行されました。
https://www.reuters.com/article/china-environment/china-notifies-wto-of-ban-on-plastic-paper-textile-waste-imports-idUSL5N1K94IS (ロイター、2017年7月)

この動きと併せて注目したいのが、国内で発生する廃棄物の増加の問題です。
急速な発展と都市化に伴い、大量消費型のライフスタイルが浸透し、
廃棄物量は年々増えて大きな問題となっています。


参照:2017年12月、日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会分科会での中国国家発展改革委員会による発表資料

そしてこの二つをつなぐキーワードがあります。
それが「循環経済システム(サーキュラーエコノミー)」です。

現在中国では、循環経済システムに関する政策が積極的に推し進められています。

2009年に「循環経済促進法」が施行され、続いて2013年には
具体的な取り組みについてまとめた「循環経済発展戦略および短期行動計画」が
国務院から発表されています。
http://www.gov.cn/zwgk/2013-02/05/content_2327562.htm
(中国人民政府国務院、2013年2月)

国家戦略として、環境管理やリサイクルだけにとどまらず、
資源の採掘から、製造、小売、消費にいたるまで、バリューチェーン全体、
ひいては社会全体で循環型経済を推進しようとしている点が特徴です。

国家発展改革委員会によると、資源循環に関連する産業は
2020年には3兆元(約50兆円 )規模に達する見込みとのことです。
https://www.china5e.com/news/news-988729-1.html(中国能源網、2017年5月)

ただし、中国が社会全体で循環型経済へ移行するには、課題もあります。

沿岸の都市部と内陸部の経済格差は非常に大きく、内陸部も含む全ての地域が
消費・廃棄型から循環経済型の経済・社会に移行するには
数十年と長期の時間が必要です。

また政府は厳しい規制により循環型経済を推進しようとしていますが、
それに応えるための技術やノウハウが中国国内には不足しています。

これらの課題をビジネスの機会と捉え、参入の方法を探っているのが、
欧州の企業や産業団体です。

スウェーデンの貿易・投資協議会は、中国が抱える課題を分析した上で、
自国の企業に向けて、産業ごとのビジネス機会をとりまとめたレポートを発行しています。
技術支援だけでなく、スウェーデン企業が得意とする
製品の寿命延長(life extension)やシェアリング・エコノミー型モデルなど
中国循環型経済構築への貢献を提案しています。

China:Circular Economy in China – Opportunities for Swedish companies(The Swedesh Trade & Invest Council、2017年12月)
https://www.business-sweden.se/en/Trade/analysis-and-reports/fact-packs-markets-and-industries/chinacircular-economy-in-china—opportunities-for-swedish-companies/

日本では企業や政府を中心に、中国に対するリサイクル技術の支援などが検討されています。
しかし中国が社会全体で循環型経済に移行しようとしていることを鑑みると、
日本企業の貢献余地はもっともっとあるはずです。
そのためにはリサイクルという断片にとらわれるのではなく、
社会経済システム全体を俯瞰的に見るという姿勢が大切です。

中国の循環型経済をとりまく今後の動きに引き続き注目したいと思います。

(リサーチャー 岡山奈央)

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