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スティールウォッチ「鉄鋼生産における石炭利用に終止符を」英日翻訳
スティールウォッチさまは、鉄鋼業界に対し、温室効果ガス排出削減を求めるNGOです。日本を含むアジア、ヨーロッパ、アメリカに拠点を置くメンバーと、鉄鋼メーカーや政府などに働きかけています。
背景
鉄鋼の製造方法を見直し、気候変動の加速を阻止する
スティールウォッチさまは「問題は鉄鋼自体ではなく、現在のその製造方法にある」と指摘しています。
鉄を作るには、原料として石炭が使われます。この石炭は「原料炭」と呼ばれ、石炭火力発電に使われる「一般炭」とは区別されています。石炭火力発電の問題点はこれまでも多く指摘されていますが、鉄鋼業界の製造方法の課題はあまり注目されてきませんでした。
しかし、鉄鋼業界によるGHG排出量は、世界全体の少なくとも7%を占めています。鉄鋼業界が示すGHG削減シナリオは、パリ協定の1.5℃シナリオを実現するにはほど遠く、取り組みを加速させなければなりません。
鉄鋼生産における石炭利用の代替策として、リサイクル鋼材の利用拡大や、石炭の代わりにグリーン水素を活用する新技術などが生まれています。
スティールウォッチさまは、鉄鋼業界や社会への提言として、同団体として初めての報告書を発表。日本語への翻訳をエコネットワークスにご依頼くださいました。
アプローチ
十分なリサーチで、鉄鋼業界に伝わる言葉を選択
今回、エコネットワークスの言語チームが特に重視したのは、専門用語の翻訳です。この報告書は、鉄鋼に関わる方に見ていただきたい内容です。その業界で実際に使われ、違和感なく受け取ってもらえる言葉にしなければ、報告書の内容が業界を動かすことはないでしょう。
そのため、製鉄のフローや製鉄にまつわる用語をしっかりと調べ、一覧にしてチーム内で共有。用語の統一を図るとともに、業界知識もチーム内に蓄積していきました。
また、報告書を十分に理解して的確に翻訳するには、脚注にある参考資料も見逃すことができません。時間はかかりますが、参考資料にも目を通し、翻訳に活かしました。
報告書『鉄鋼生産における石炭利用に終止符を』は、こちらに公開されています。
成果
「誰に」「何を」伝えたいのか。報告書の意図を把握した翻訳
大切なのは、報告書が「伝わるように」訳すこと。一つ一つの言葉を表面的に訳すのでは、伝わらないかもしれません。ときには日本ではまだ知られていない概念、つまり定訳のない言葉もあります。「誰に何を伝えたいのか」という報告書の役割と内容を把握し、読み手に受け取ってもらえるよう訳していくのが、翻訳者の仕事です。
スティールウォッチさまをはじめNGOさまのご活動が、社会をより良い方向へ動かしていくよう、これからも言語を通じてご支援していきたいと私たちは考えています。
ご担当者さまからの声
スティールウォッチ アジアコミュニケーション・リサーチ担当 松本 志織 さま
「まだよく知られていない鉄鋼分野の脱炭素化について、より多くの人に知ってもらいたいという思いで報告書を作成、エコネットワークスさまへ翻訳を依頼しました。丁寧な翻訳業務、特に専門用語が日本語で一般的にどのように使用されているかを見つけ出し、成果物として示していただいたことに感謝しています。報告書で使われる用語の正確性は、専門家を含む読者がスティールウォッチに持つ印象を左右するため非常に重要です。今後ともぜひご一緒したいです。」