Our Stories:企業のグリーンウォッシュ対策を伴走支援

近年、欧米を中心に「グリーンウォッシュ」に関する訴訟が急増しています。こうした動きの背景にある欧州や日本における規制動向や企業が抱える課題とは? 欧州の自主規制機関や認証団体による環境主張に関するコースを修了しサポート業務を担っている佐原ツェアマン理枝さん(写真左)と、グリーウォッシュに関する勉強会やコンテンツ制作を担当する宮原桃子(同右)さんに聞きました。

「グリーンウォッシュ」規制強化へ 訴訟も急増

ーグリーンウォッシュに関する規制動向など各国の動きについて教えてください。

佐原:まず、グリーンウォッシュとは、企業が事業活動や商品を訴求する際、環境に配慮しているように見せかける表現や手法を用いることを指します。世界ではグリーンウォッシュを取り締まる法規制の厳格化が進んでおり、EUでは「不公正取引方法指令(UCPD)」の改正に伴い、2026年9月から環境表示に関する規制が強化されます。「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」などの実証できない一般的で曖昧な環境表示や、適切な実施計画を伴わない環境目標の表示などが禁止対象となります。さらに、規制強化とともに訴訟も急増しています。主要市場におけるグリーンウォッシュ事案は、2024年には2019年に比べEUで4倍、米国・カナダで3倍超に達しています。また、近年は、制裁金が高額となる事例も出ています。

宮原:日本では、表示全般に関する法律として景品表示法がありますが、環境に関する目的・要素が明確に示されているとはいえない状況です。そのため2008年に環境省が「環境表示ガイドライン」を公表しましたが、あくまでガイドラインであり法的拘束力はありません。ただ、グローバルな規制強化の流れも受け、同ガイドラインが2026年3月に13年ぶりに改定されました。ライフサイクル全体における影響の把握・表示の重要性、消費者に対する情報開示のあり方、オフセット*1やマスバランス*2への注意喚起などが強調され、これまでよりも少し踏み込んだ内容になっています。

*1 温室効果ガス排出量のうち削減が難しい分を外部の削減・吸収プロジェクト(再生可能エネルギーの導入や森林保全など)への投資によって相殺する仕組み

*2 原料の総投入量と製品としての総出力量のバランスを管理する考え方であり、特定の原料(例:持続可能な原料)の使用量を全体の中で割り当てて製品に反映させる手法

日本でも高まる危機意識 サステナビリティ×コミュニケーションの専門性で対策を後押し

ーそうした状況において、企業はどのような対応が求められているのでしょう。

佐原:企業は環境訴求を行う際、法的・レピュテーションリスクを避けるためにも、適切な情報発信に向けた対応が求められます。しかし、とりわけグローバルに事業を展開する企業は先行地域と日本との間に法規制のギャップがある中、手探りで取り組んでいるのが現状です。

宮原:昨今では、日本においてもグリーンウォッシュに対する関心や危機感は高まってきていると感じます。一方、企業が実際に対策を行うにあたっては、社内で法規制に関する情報が不足していたり、取り組みの必要性や課題に対する認識において部署間で差があったり、とまだ課題があります。また、どの部署がどのように取り組むのかといった体制や仕組みがまだ構築されていない企業が多い印象です。

-各国の規制動向や企業の現状を踏まえて、エコネットワークス(ENW)ではどういった取り組みを行っているのですか。

宮原:ENWでは、20年以上にわたるサステナビリティ×コミュニケーション領域での専門性を活かして、主に企業を対象にグリーンウォッシュに関する勉強会や対話セッションを実施し、国内外の法規制や法的措置を受けた企業事例などを共有しています。必要な情報を提供するとともに、リスクに対する共通認識を醸成するなど、企業が具体的な対策を検討する際のスタート地点に立つお手伝いをしています。グリーンウォッシュに関する課題や対策はセクター全体で共通点があることも多いため、同業他社が複数集って学び、対話するセッションも可能です。これらのセッションは、ENWが2025年に立ち上げた組織を超えて様々なメンバーが集う学びと対話のプラットフォーム「Wave With(ウェーブ・ウィズ)」の一環で行っています。さらに、こうした学びの段階の先には、対策の策定や実務への落とし込みに向けて、方針策定や体制構築、社内啓発コンテンツの作成、発信コンテンツの分析・アドバイスなど一貫した支援を行っています。

グリーンウォッシュ対策を企業価値向上の機会に

ー企業のグリーウォッシュ対策に向けた支援を行う中で難しさを感じることはありますか。

宮原:日本国内においては、EUなどの先行地域と日本との間に法規制のギャップがある中、どこに照準を合わせて取り組んでいくべきかといったジレンマを抱えている企業も少なくありません。難しい点ではあるのですが、ENWとしてはまず「最低限やるべきこと」と「目指すべきところ」を明確にした上で、全社方針をつくることを推奨しています。その方針を基に、関連部署で環境訴求に関する発信コンテンツを見直していくことが重要です。以前、ある企業さまにおいてグリーンウォッシュに関するガイドラインの制作をご支援をしたのですが、制作過程そのものがこれまでの方針や取り組みを見直す良い機会になったと感じています。

佐原:環境主張が先行地域で法的要件へと変化する転換期にある今、環境コミュニケーションは、従来の表現の領域を超え、科学的根拠を証明するコンプライアンスへの転換を迫られています。これらの複雑な規制をいかに実務へ落とし込むかは、多くの企業さまが直面する課題です。適切な環境主張管理を行うためにも、グローバル展開される企業さまは、海外の動向をいち早く知り、対応の仕方とマインドセットを組織に定着させることが重要です。もちろん、私たち自身も同様に取り組みを進める必要があります。

宮原:コンプライアンスという観点で、企業の方針や環境訴求には法律的な判断が伴うものの、社内での監査・チェック体制が整っていない企業はまだまだ多いと感じます。法律の専門家との連携が今まさに必要とされており、ENWは一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)とも連携し、企業の状況に寄り添いながらその時点でのベストな対策をしっかりとっていけるようご支援していきたいと考えています。

ーこれからグリーンウォッシュ対策を社会全体で進めるにあたり、何が重要だと感じていますか。

宮原:グローバルでの法規制強化の中で、企業はリスク対応として取り組みを進めなければいけないことは明白です。ただ、先日サステナビリティ領域を担当する方々とお話しした際、「規制の必要性は理解しつつも、あまりに厳しすぎると環境への取り組みや製品を展開したり発信したりすることへの意欲がそがれてしまうのではないか」といった意見もありました。

この対話を通じて、グリーンウォッシュに関する世界的な動きは、環境に真摯に取り組む企業にとってのチャンスでもあるという観点もしっかり伝えていくことの重要性も感じました。グリーンウォッシュ規制が目指すことは、環境に真摯に取り組む企業こそが評価されて競争力を持ち、消費者は真に環境に貢献する商品を選べることで、最終的には環境課題の解決が進んでいくことだと思います。そうした目指すべき姿を実現できる法規制や仕組みであることが重要だと感じますし、また企業においては、グリーンウォッシュ対策を社会からの信頼性を向上するための前向きなアクションと捉えて取り組んでいただけるとよいと思います。


ENWでは、組織を超えて様々なメンバーが集う学びと対話のプラットフォーム「Wave With(ウェーブ・ウィズ)」の一環で、様々なテーマに関して社内や企業間で考えるセッションを企画しています。グリーンウォッシュをテーマにしたセッションも多く行っていますので、ご関心がありましたらお気軽にご相談ください。

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