FoE Japan「炭素市場レポート」英日翻訳

© Hanae Takahashi / Friends of the Earth Japan

背景

炭素市場と気候正義

FoE Japanさまは2021年10月、翻訳レポート『カーボンユニコーンを追いかける〜炭素市場と「ネットゼロ」のまやかし〜』を発行しました。

近年、さまざまな場面で「カーボンニュートラル」「ゼロエミッション」「実質ゼロ」「ネットゼロ」という言葉を目にする機会が増えました。しかし、このレポートは「その実態は、化石燃料の使用を継続し、温室効果ガス排出量の段階的削減の必要性から注意をそらすためものとなっています」と注意を促しています。

本レポートは、大型排出企業が掲げるネットゼロ戦略をひもときながら、ネットゼロの考え方の根本的な誤り、それらの戦略に組み込まれている「炭素市場」や「自然に基づく解決策」によって懸念される問題点、そして大型排出企業がどのように炭素市場を拡大していく予定なのかを分析・解説しています。そして、「オフセット」や「炭素市場」に頼らずに気候正義を実現するための道筋が示されています。

エコネットワークスでは、FoE Japanさまの監修のもと、英日翻訳をご支援しました。

アプローチ

常に変化する言葉を捉える

気候変動に関する新たな語句が次々と生まれ、また訳語も変化しています。例えば「climate justice」は「気候の公平性」、「気候正義」が候補として挙げられます。しかし、現在は後者の「気候正義」が主流となっています。

それは、最も温室効果ガスを排出していないにもかかわらず、最も深刻な被害を受けるのは貧しい途上国や弱い立場の人々、将来世代であることから、気候問題は国際的な人権問題であるという認識が社会で強くなっている表れでもあります。

翻訳チームではそのようなトレンドも確認し、重要語句についてアイデアを出しながら訳語を確定し、全体での統一も図りました。

成果

日本メディアでの紹介につながる

英国グラスゴーでのCOP26開催前に公表されたこのレポートは、現地の日本人記者にも紹介されました。本書やFoE Japan 小野寺ゆうり顧問への取材を基に書かれた、Glasgow Financial Alliance for Net Zero(グラスゴー金融同盟、GFANZ)に関する記事の中で、「金融同盟の1京円を上回る金融資産がオフセットによる途上国の『炭素植民地化』ではなく、再生可能エネルギーへの移行による排出削減につながるよう目を光らせる必要がある」との発信につながりました。

レポートの最終ページにある「真のゼロ(real zero)」に向けてまとめられた提言は、エネルギーシステムの変革だけでなく、先住民族や小規模農家、地域コミュニティの権利擁護、新しい経済や社会のあり方にも言及しています。気候問題の解決を願い、それに取り組んでいる多くの方にぜひ読んでいただきたいレポートです。

関連情報:
プレスリリース:翻訳レポート発行『カーボンユニコーンを追いかける〜炭素市場と「ネットゼロ」のまやかし〜』(FoE Japan、2021年10月25日)
https://www.foejapan.org/
climate/about/report_carbonunicorns.html
 

英文プレスリリースならびに報告書はこちらからご覧になれます。
Chasing Carbon Unicorns: The deception of carbon markets and “net zero”
https://www.foei.org/resources/publications/
chasing-carbon-unicorns-carbon-markets-net-zero-report

「ネットゼロ金融同盟」の金融資産1京4800兆円に ロンドンは「ネットゼロ金融市場」宣言(ニューズウィーク日本版、2021年11月4日)
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/
2021/11/14800_2.php

 

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