ERG(従業員リソースグループ)の可能性 働く人と組織を支える「リソース」として

2026 / 7 / 7 | カテゴリ: | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

(Photo by Redd Francisco via Unsplash)

職場に「相談できる場」と「変化を生む力」をつくる仕組みとして、ERG(employee resource group)が注目されています。日本でも訳された「従業員リソースグループ」を耳にする機会が少しずつ増えていますが、初めて聞いたときに「リソースとは何を指すのだろう?」と感じる人も少なくないはずです。この記事では、世界170ヵ国で「働きがいのある会社」認証プログラムを実施するGreat Place To Work®(GPTW)のInsightの記事やカナダ政府のERG支援ガイダンスを参照しながら、ERGの成り立ち、意味、そして組織と従業員の双方にもたらす可能性を整理します。

ERGとは何か

ERGの起源は、米国で1960年代にゼロックスの黒人労働者たちが、職場で直面していた人種に関わる課題を当時のCEOと話し合うためにグループを組織したことにあるとされています。現在のERGは、共通するアイデンティティ、特性、経験、関心を持つ従業員が自主的に集まるグループです。例えば、性別、性自認、性的指向、人種、先住民族としての背景、障害者、退役軍人としての経験などを軸に形成されます。大切なのは、同じような悩みや課題を持つ人と出会い、安心して話し、相談し、支え合える場になることです。

呼び方は違っても、目的は同じ

ERGの名称は、組織によってさまざまです。Coca-Cola U.S.のAbility Inclusion Networkのように「○○ Network」と呼ぶ場合もあれば、近年はBusiness Resource Group(BRG)という名称を用いる企業や政府組織もあります。米国ポートランド州立大学のように、ERGより広い概念としてaffinity groupを紹介している例もあります。呼び方は異なっても、従業員が安心してつながり、声を届け、職場をより良くしていくための場である点は共通しています。

日本で伝えるときの工夫

ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本語ページでは、ERGを「社員の自主的なグループ」と説明しています。英語圏で定着している言葉をそのまま持ち込むだけでなく、日本の読者にも伝わる表現に言い換えている点が印象的です。ERGを広める上では、専門用語として紹介するだけでなく、「誰のために、何を支える仕組みなのか」を具体的に伝えることが重要です。

ERGを立ち上げるための4つのステップ

GPTWの記事では、ERGを立ち上げる際のポイントとして、次の4つのステップが紹介されています。単にグループをつくるだけでなく、現状を把握し、目的を共有し、経営層の支援を得ながら、メンバーの成長につながる場にしていくことが大切です。

  1. 初期データを集める:まず、従業員が日々どのような体験をしているのかを把握します。アンケートや分析ツールを用いて現状を可視化し、属性やグループによって経験に差がないかを確認することで、ERGが取り組むべき課題が見えやすくなります。
  2. 指針を定める:グループのメンバーと共に、ERGのビジョンやミッションを言語化します。「誰が参加できるのか」「互いにどのような姿勢で関わるのか」「どのような活動を重視するのか」を事前に確認しておくことで、参加者が安心して関われる土台ができます。
  3. 経営陣の支援を得る:各ERGに、上級幹部のエグゼクティブ・スポンサーを配置します。スポンサーは、経営陣とERGをつなぐ橋渡し役であると同時に、活動の意義を組織全体に伝え、必要な支援を得るための重要な存在です。
  4. 成長の機会を提供する:ERGは、underrepresented groups(組織や社会の中で発言の機会が限られやすい人々)にとって安心できる場であると同時に、メンバーが学び、力を伸ばす場にもなります。リーダーシップ研修、EQ(心の知能指数)、時間管理など、実務やキャリアに役立つ学習機会を組み込むことで、活動の価値はさらに高まります。

「リソース」に込められている意味、従業員と組織の双方にとっての価値

ERGがなぜ注目され、重要な取り組みとされるのかは、「リソース」という言葉に注目すると見えてくるように思います。企業活動におけるリソースとは、目標を達成し、業務を進めるために活用できる材料、資産、手段を指します。では、ERGは誰にとって、どのようなリソースになるのでしょうか。

従業員にとってのERGは、職場での困りごとや働く中での悩みを話せる場所であり、メンターや仲間とつながれる場です。一方、組織にとっては、従業員の声を受け止め、尊重し、支援する姿勢を具体的に示す仕組みになります。その積み重ねは、優秀な人材の定着や、従業員との信頼関係の向上にもつながります。ERGは、単なる社内グループではありません。働きやすさとやりがいを、従業員と組織が共につくっていくための実践的なリソースなのです。

※英文の訳はすべて筆者による試訳です。

参照:
What Are Employee Resource Groups (ERGs)? (Insight, Great Place To Work®)
Supporting employee resources groups: Evidence-based guidance for employers (the Government of Canada)

 


組織を超えて様々なメンバーが集う学びと対話のプラットフォーム「Wave With(ウェーブ・ウィズ)」。そのセッションの一つとして、ビジネスと人権に取り組む団体「Social Connection for Human Rights(SCHR)」と共に、お茶会のようなカジュアルな雰囲気で、人権に関するテーマについておしゃべりする「SCHR会(ス茶会)×ENW」を月1回開催(30分間/オンライン)しています。

6月は「ERG(従業員リソースグループ)、その効果や運用は?」をテーマに開催しました。実際にERGを立ち上げて活動を展開されている参加者の声をぜひご覧ください。

ENWでは、ERGの活動に実際に取り組んでおられる、あるいはこれから立ち上げようと考えておられる企業同士が意見交換できる交流会についてのご相談も承っています。ご関心のある方は、ぜひこちらのフォームよりお気軽にお問い合せください。

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