カナダ発のequity-deserving groupsが問い直すもの:underrepresented/marginalizedとの違いから考える

2026 / 5 / 28 | カテゴリ: | 執筆者:EcoNetworks Editor

(Photo by Alexandra via Unsplash)

DEI(多様性・公平性・包摂性)の文脈で、特定の集団を指す言葉としてunderrepresented groupsやmarginalized groupsがよく使われます(GRIスタンダード日本語版では、それぞれ「発言権の低い人々」、「取り残された人々」と訳されています)。しかし近年、カナダでは政府機関や大学、NPOを中心に、これらとは異なるニュアンスを持つ表現が定着しつつあります。それがequity-deserving groupsです。

underrepresented/marginalizedとの違い

カナダ政府はこの言葉を公式の用語集で次のように定義しています。

Equity-deserving groups: A group of people who, because of systemic discrimination, face barriers that prevent them from having the same access to the resources and opportunities that are available to other members of society, and that are necessary for them to attain just outcomes.
(試訳)equity-deserving groups:構造的な差別によって、公正な結果を得るために必要な資源や機会に、他の人々と同じようにアクセスすることを阻む障壁に直面している人々。

underrepresented groupsは「組織や社会の中で発言の機会が限られやすい人々」を指し、marginalized groupsは「社会から疎外され、取り残されてきた人々」を示します。どちらも現状を描写する言葉ではありますが、なぜそうなっているのか、誰がその状況を変える責任を持つのか、という問いには直接答えていません。

equity-deserving groupsはその点で一線を画します。この言葉の核心はdeservingという一語にあります。deserveとは「~を受けることが当然である」という意味であり、構造的な差別によって不利益を受けているという客観的な状態を記述すると同時に、「このグループが公正に扱われることは当然であり、社会・制度がそれを保障する責任を負う」という規範的な主張を含む言葉です。

新たな表現が生まれた背景にある考え方

この表現がカナダで定着した背景には、2015年にTRC(真実和解委員会)が発表した94の行動指針を受けて加速した、先住民族との歴史的な関係修復への取り組みがあります。カナダ政府の用語集は、equity-deservingという表現を好む理由としてthe burden of seeking equity should not be placed on the group(公正さを自ら勝ち取りに行く負担を当事者に負わせるべきではない)という考え方を示しています。これは、「不公平な状況に置かれた側が、自ら声を上げ権利を求め続けなければならない」という前提そのものを問い直す発想です。構造的な差別の是正を社会・制度側の責任として言語の次元で明示しようとする意識が、この表現を生んだといえます。

現時点では、この表現の使用はカナダを中心としており、UKやオーストラリア、国際機関の文書ではunderrepresented groupsやmarginalized groupsが引き続き主流です。ただし、DEIをめぐる議論が「代表性の確保」から「構造的な不公正の是正」へと深化するにつれ、equity-deserving groupsが持つ規範的な含意はますます重要になっていくと感じています。

一つの言葉をどう訳すかという問いは、その言葉の背後にある思想をどう受け取るかという問いでもあります。言葉の選び方は、私たちが社会の課題をどう捉えるかを映し出します。
equity-deserving groupsという表現が、日本のDEI議論にも新たな視点をもたらすのではないでしょうか。

※英文の訳はすべて筆者による試訳です。

古田綾子/翻訳者)


言葉を起点に無意識の偏見や固定観念に気づき、言葉や表現のあり方を考えることは、企業が展開するDEI施策そのものを見つめ直す機会にもなります。

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