Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
genericからspecificへ 環境・人権への取り組みと情報開示を改善するために
国際的なNPOネットワークのリード・ザ・チャージ(Lead the Charge)*は2026年3月、世界の大手自動車メーカー18社のサプライチェーンにおける環境・人権への取り組みを評価する「Leaderboard Report」2026年版を公開しました。
エコネットワークス(ENW)は過去数年にわたり日本語訳の制作をご支援していますが、継続して年次レポートの翻訳を担当していると、「昨年よりも使用頻度が増えた単語」に気づくことがあります。今年のレポートでは、「generic(一般的な)」がそれにあたります。昨年は1回でしたが、今年は改善すべき点を示す記述で計14回使われていました。今回は、この単語が使われている文脈から、大手自動車メーカーを含め、企業に求められる取り組みや情報開示について考えます。
*リード・ザ・チャージ(Lead the Charge)は、化石燃料を使わない公正でサステナブルな自動車サプライチェーンの実現を目指す、世界各地のアドボカシー組織から成るネットワークです。世界の大手自動車メーカー18社のサプライチェーンにおける排出量削減や環境への悪影響の低減につながる取り組み、人権侵害を排除する取り組みについて、88の指標を基に評価を実施し「Leaderboard Report」として公表しています。2026年3月に第4版が公表されました。
一般的な取り組み・開示は評価が低い
レポートの中でgenericが使われている例のうち、主なものは以下の通りです。
Shifting from generic to more impactful supply chain practices
サプライチェーンの取り組み:一般的なものから、より実効性の高い取り組みへ移行Generic reporting about company progress via broad statements about activities undertaken and disclosure of aggregated / supply chain-wide progress data.
実施した取り組みに関する大まかな記述や、集計データ/サプライチェーン全体の進捗データの開示にとどまる一般的な進捗報告
レポートによると、平均的な企業の大半は、サプライチェーン全体を対象とした脱炭素化やデューデリジェンスにおいて、標準化されたアプローチや一般的な開示にとどまっています。
一方、先進的な自動車メーカーは、より的を絞った原材料別・課題別のサプライチェーン戦略を追求し始めており、現場での実質的なインパクトを生み出す可能性が高まっています。また、進捗についてもより詳細かつ細分化した報告を行うようになっていると述べています。
レポートの文脈から、genericには「個別具体性を欠く」「総花的な」といったネガティブなニュアンスが感じられます。
大手自動車メーカーの先進事例
スコープ3排出量の総量のみを開示している企業が多い中、テスラはスコープ3カテゴリ1排出量の総量を開示した上で、バッテリー、アルミニウム、鋼材、ガラス、プラスチック、その他の項目別に割合を示しています。さらに、バッテリーサプライチェーンの排出量についても、全体の排出量に占める部品ごとの割合を細分化して示しています(同社のインパクトレポート2024、p.154を参照)。
また、Geely、メルセデス・ベンツ、ボルボは、発売したEVモデルごとに使用されている低排出の鋼材(メルセデス・ベンツ)およびアルミニウム(Geely、メルセデス・ベンツ、ボルボ)の量を開示しており、透明性の評価が高くなっています(2026年版リーダーボードレポート、p.8を参照)。
企業に求められるサプライチェーン関連の取り組みや情報開示とは
企業は、一般的なコミットメントやプロセスを超えて、より的を絞った測定可能な取り組みへ移行することが求められています。また、それぞれのサプライチェーンが抱える個別のリスクや課題に実効的に対処することも不可欠です。
情報開示については、より細分化したデータの開示や、取り組みの対象範囲(例:一次サプライヤーだけでなく二次、三次サプライヤーを含むか否か)を明示して透明性の高い報告を行うことが求められています。
一般的な(generic)ものから、個別具体的な(specific)取り組みや情報開示へ。より多くの企業がこの方向へと向かうことをコンテンツ制作や翻訳などを通じて多面的にご支援したいと考えています。
ENWでは、翻訳以外にも、情報開示支援やコンテンツ制作などを行っております。詳しくは、サービスページをご覧ください。