AIによる化石燃料の増産にストップを Enabled emissionsの情報開示を求める動き

2026 / 4 / 1 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

(Photo by Mihai 👑 via Unsplash)

近年、IoT、クラウド、AIといった技術が急速に発達し、現在の私たちの生活に欠かせないものとなりました。どこにいても必要な情報が簡単に手に入り、世界中の人たちとつながれるなど、一昔前には考えられなかったことが可能になっています。

新たな温室効果ガス排出量の増加につながっている

一方で、こうしたIT技術が新たな温室効果ガス(GHG)排出量をもたらしているという負の側面もあります。その一つとして知られているのが、膨大なデータ処理に必要な巨大なデータセンターの建設が進み、大量の電気が必要になるという問題です。

国際エネルギー機関(IEA)が2025年4月に発表した報告書『Energy and AI(仮訳:エネルギーとAI)』によると、世界のデータセンターの電力消費量は2024年に415TWh(テラワット時)で、2030年には倍増して約945TWhになると予測されています。

Enabled emissionsとは

問題は、IT関連企業が排出する直接的な増加だけではありません。石油・天然ガス会社がAIなどを利用することで、効率的に化石燃料の新規開発が可能になり、これによって生まれる新たな排出量は、enabled emissionsと呼ばれています。

Enabled emissions are the additional greenhouse gases released when AI, IoT, and cloud computing make more fossil fuel production possible.
(試訳)Enabled emissions」(イネーブルド・エミッション)とは、AI、IoT、クラウドコンピューティングによって化石燃料の増産が可能になったときに追加的に排出される温室効果ガスである。

enabledというのは、enable(可能にする、有効にする、手段を与える)という動詞から来ており、enabled emissionsの直訳は「可能にされた排出量」です。Enabled Emissions Campaignの共同設立者ホリー・アルパイン氏はインタビューの中で、「fossil fuel output enabled by technology(技術の力で可能になった化石燃料の生産)」「tech-enabled fossil fuel emissions(技術の力で生産が可能になった化石燃料由来の排出量)」のような形で、enabledという言葉を使っています。

ホリー・アルパイン氏はかつてMicrosoftに勤務し、社内のサステナビリティ改善に取り組んでいましたが、同じくMicrosoftで働いていたウィル・アルパイン氏と共にEnabled Emissions Campaignを設立しました。上のインタビュー記事の中で、Microsoftは2030年までに自社をカーボンネガティブにすると約束しています。その一方で、同社は化石燃料生産の採算性と効率性を上げるAIツールを開発しており、大手の石油・天然ガス企業が低コストで新規の採掘を行えるようにパートナーシップ契約を結んでいると語っています。

Enabled emissionsがなぜ問題か

彼らの問題意識は、このenabled emissionsの規模の大きさから来ています。同団体のウェブページ2つ目のセクション「The climate blind spot(気候変動に関する盲点)」に排出量を比較したグラフが掲載されています。

Microsoftが石油・天然ガス会社と契約している数多くのプロジェクトのうち、わずか2事業における年間排出量(左端)が、Microsoft、Google、Metaといった巨大IT企業各社の年間排出量の約3倍に相当していることを示しています。化石燃料採掘事業との契約はMicrosoftが最大の57%を占めているものの、それに加えてアマゾン ウェブ サービス(AWS)が17%、Google Cloudが13%、その他のIT企業13%となっています*。全社の全事業を足し合わせると、間接的な排出量の増加にどれだけ寄与しているのでしょうか。

*Enabled EmissionのウェブサイトのFAQの「Which tech companies are most culpable?」に対する答えを参照

化石燃料の増産を止め、関連する排出の削減を推進するために

近年、化石燃料事業に資金提供している金融機関に関しての情報が明らかにされ、資金面からGHG排出量の増加を後押ししている金融機関の責任を追及する動きが進んでいます。これと同様にenabled emissionsの情報開示を進めれば、技術面から化石燃料の増産を後押ししているIT企業の責任も追究する流れが生まれるかもしれません。化石燃料由来の排出削減を国際社会全体で推進するにあたり、とても有効な手法だと思います。

そして、「AI should be helping accelerate the clean energy transition(AIはクリーンエネルギーへの移行を加速させるために使われるべき)」というホリー・アルパイン氏の言葉に、心から賛同します。

※記事中の和訳は筆者の試訳です。

(五頭美知/翻訳者)

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