重要文書の翻訳を考える:企業方針の翻訳で求められること

(Photo by Vitaly Gariev via Unsplash)

企業が公表する各種方針やトップメッセージは、会社としての姿勢を伝える重要な情報です。正確であることはもちろん、組織として大切にしている思いや意図が届けたい相手に適切に伝わる内容であることが求められます。

今回は、特にエコネットワークス(ENW)に策定・翻訳のご相談をいただくことが多い人権方針を例に、翻訳する際に気を付けたいポイントをまとめました。

方針翻訳の落とし穴

国際的な指針やガイドラインを押さえなければ、グローバルでの信頼、評価は得られない

企業方針は、ESG評価や投資家による審査対象となるため、国際基準に沿って策定・翻訳されているかどうかが信頼性に直結します。

例えば人権方針の場合、「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」などの国際基準に沿って、人権デュー・ディリジェンスを実行することや、救済へのアクセスを整備することなど、求められる要素を明記する必要があります。

翻訳の際には、そのような国際基準で使用されている表現を取り入れ整合性を確保することで、評価機関や投資家の信頼を得やすくなります。

②単なる言語の置き換えでは、伝えたい意図が伝えたいトーンで伝わらない

上記のとおり企業方針は、評価機関対応のため、国際的な基準に則ってきっちり書くことが求められます。一方で、ときに意図せず自然な表現が損なわれてしまうことも。結果的に、原文をそのまま直訳しても、本来伝えたい意図やニュアンスが十分に伝わらない場合があります。

<日本語原文> 私たちは人権を大切にし、適切に配慮して事業を行ってまいります
<直訳>  We value human rights and will conduct our business with appropriate consideration.
<訳案>  We are committed to respecting human rights and preventing adverse impacts across our operations.

上記<直訳>と<訳案>の英文を比べると、committed toを使うことでより強い覚悟が伝わるとともに、「適切に配慮」を「preventing adverse impacts across our operations(事業全体を通して負のインパクトを防止する)」と具体的に表現することで行動を伴う約束であることも伝わります。

このように、曖昧な表現や丁寧な表現がたとえ日本語では違和感がないとしても、英語など他の言語にしたときに適切に伝わるかという視点は翻訳者として常に持っておく必要があります。

伝わり方を左右する協働の重要性

ここまで述べてきたとおり、方針の翻訳にあたっては、言葉の表面的な理解だけでなく、その背景や発信者の意図、トーンを深く理解する必要があります。そのためには、企業と翻訳者の協働が不可欠です。時間はかかりますが、こうした丁寧なプロセスを踏むことが方針の信頼性や説得力を高めるカギになると考えます。

なお、次回のブログでは、経営者の言葉をどう他言語で伝えるかーートップメッセージの翻訳ならではのポイントについてまとめる予定です。

※訳はすべて筆者による試訳です。


エコネットワークス(ENW)では、DEI・人権に関するリスク分析や重要課題の特定、方針策定、ライツホルダーとの対話支援、従業員啓発コンテンツ制作など、多角的な支援を行っています。

【主な支援実績】
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