Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
2030年に向けてやるべきこと 世界的な社会目標「ネイチャーポジティブ」とは?

(Photo by Katja Anokhina via Unsplash)
環境に配慮した行動を一言で表す言葉として、1980年頃の「省エネ」に始まり「エコ」や2000年代の「ロハス」などこれまでいろいろな流行りがありましたが、今はやはり「SDGs(エスディージーズ)」でしょうか。「Sustainable Development Goals(SDGs)」(持続可能な開発目標)は、2015年に国際連合で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2030 Agenda for Sustainable Development)の中で定められています。これが採択された当時、2030年はかなり先のことだと思っていましたが、今年2025年はもう2020年代の後半へと突入しています。
そして今、新たに注目されているのが「ネイチャーポジティブ」という言葉です。
様々な2030年目標
「2030年」という年は、いまや多くの国際目標の「期限」として位置付けられています。脱炭素、再エネ、生物多様性――それぞれの分野で、様々な国や地域が明確な数値目標を掲げており、この10年は「行動の10年(Decade of Action)」と呼ばれています。
例えば日本国内でいうと、政府は2021年に閣議決定した「地球温暖化対策計画」で、「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減すること」を目指すという排出削減目標を掲げています。
欧州連合(EU)では、「欧州気候法」(European Climate Law)で2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を55%以上削減するという目標を法的に定め、この目標達成のための政策パッケージ「Fit for 55」を発表しています。その一環で2023年に採択された「改正再生可能エネルギー指令(RED III)」(Renewable Energy Directive)では、エネルギー消費に占める再生可能エネルギー比率を、2030年までに少なくとも42.5%とする目標を定めています。
また、EUの「2030年生物多様性戦略」(EU Biodiversity Strategy for 2030)では、2030年までに生物多様性を回復軌道に乗せるとともに2050年までに世界の生態系を再生するという目標を掲げ、2030年までに30億本の植樹を行うなど具体的な目標も示されています。そしてこの戦略に沿って2024年に採択された「自然再生法」(NRL: Nature Restoration Law, Regulation on Nature Restoration)では、2030年までにEUの全陸域・海域の20%を回復させることを目指しています。
ネイチャーポジティブ
このように、2030年を区切りとして様々な環境目標が立てられていますが、なかでも生物多様性に関しては、2022年の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール地球生物多様性枠組」で世界的な目標が設定されており、これは「ネイチャーポジティブ(自然再興)」と呼ばれています。
Nature Positive is a global societal goal defined as ‘halt and reverse nature loss by 2030 on a 2020 baseline, and achieve full recovery by 2050’, in line with the mission of the Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework.
(和訳)「ネイチャーポジティブ」は、「昆明・モントリオール地球生物多様性枠組」のミッションに沿って、「2020年を基準として、2030年までに自然の損失を食い止め、反転させ、2050年までに完全な回復を達成する」という世界的な社会目標です。
つまり、今は自然がどんどん失われるマイナス(-)方向にある中、この流れに歯止めをかけ、かつての豊かな自然を取り戻すポジティブ(+)方向の流れをつくるのだという目標を表しており、以下の図で説明されます。

(出典:https://www.iucn.jp/explanation/nature_positive/ )
ずいぶん先だと思っていた「2030年」が意外にあっという間にやって来そうなことに驚くとともに、気候変動も生物多様性の損失も、対策が待ったなしであることもまた事実です。ずるずると先延ばしにしてしまうと、取り返しのつかないことにもなりかねません。今年国連から出されたSDGsの年次進捗報告では、全ターゲットのうち順調に進んでいるまたはある程度前進しているものは35%しかないと記されています。残された時間は、あと5年。あらゆる取り組みを加速して、シナジーを生み出していくことが求められています。
(五頭美知/翻訳者)
※英文の訳は、引用部分を除き筆者による試訳です。