日本で進むバイオエコノミー戦略、循環型バイオエコノミーへの進化を期待

2025 / 9 / 30 | カテゴリー: | 執筆者:Yasuko Sato

(Photo by melGreenFR via Pixabay)

日本は2024年6月、「バイオエコノミー戦略 」を策定しました。今年に 入ってから翻訳のご依頼をいただく文書にも「バイオエコノミー」という言葉が見られるようになっています。バイオエコノミー(bioeconomy)はこれから世界経済の中で大きな割合を占めてくると思われますが、同時に循環型バイオエコノミー(circular bioeconomy)という概念も重要になっています。欧州と日本の資料を基に、これらの言葉について掘り下げます。

バイオエコノミーとは? 定義と製品・サービス

バイオエコノミーの概念は2009年、経済協力開発機構(OECD)の「The Bioeconomy to 2030 」の中で提唱され、次のように説明されています。

…the bioeconomy can be thought of as a world where biotechnology contributes to a significant share of economic output.
…バイオエコノミーとは、バイオテクノロジーが経済生産の大きな割合を占める世界と考えることができます。

バイオエコノミー市場は、欧州では既に2.4兆ユーロ を超えています。日本では現在60兆円規模ですが、2030年には100兆円規模に拡大 することを目指しています。また、市場の拡大に伴い、雇用の創出も期待されています。

バイオエコノミーについて、もう少し具体的な定義を見てみます。EUの定義 によると、バイオエコノミーは再生可能な生物資源(動植物や微生物など)を使用して食料や原材料、エネルギーなどを生産することを指します。循環型の低炭素社会への歩みを加速させるとともに、生物多様性や環境を保全しつつ、経済基盤を強化するものでもあります。

日本の「バイオエコノミー戦略 」では、次の5つの分野を戦略の対象としています。あわせてカッコに具体例も挙げます。
・バイオものづくり・バイオ由来製品(例:バイオプラスチック、培養肉)
・持続的一次生産システム(例:ゲノム情報を利用した新品種)
・木材活用大型建築・スマート林業(例:建築用木材)
・バイオ医薬品・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連産業(例:ワクチン、iPS細胞)
・生活習慣改善ヘルスケア、デジタルヘルス(例:ウェアラブルデバイス)

国立競技場や大阪・関西万博で大型の木造建築が行われたのも、こうした社会の動きの一環といえそうです。

バイオエコノミーから循環型バイオエコノミーへ

さらに、2025年5月に発行された国連貿易開発会議(UNCTAD)のレポート では、バイオエコノミーと循環型経済(circular economy)を統合した循環型バイオエコノミー(circular bioeconomy)という概念の重要性が説明されています。

多くの場合、バイオエコノミーは線形の事業モデルに基づいています。生物資源であっても使い捨てれば資源は枯渇してしまいます。土地利用の変化によっても、生物多様性の喪失が引き起こされる可能性があります。循環型バイオエコノミーは、生物資源をできる限り長く活用し、廃棄物を最小限に抑えることで「生物資源の価値を最大化すること」を目指します。

例えば、生ごみなどの有機残渣は、コンポストにして有機肥料をつくることができます。また、プロテインたっぷりのバイオマスに変換してくれるアメリカミズアブの餌にして、その生成物を動物飼料にすれば、従来の飼料であるトウモロコシや大豆と置き換えることもできます。

この報告書 によると、循環型経済とバイオエコノミーの両戦略を統合させているのは143カ国中2カ国(エストニアとオランダ)のみでした。国家のバイオエコノミー戦略に、最初の段階から循環型経済を埋め込むべきであると、エレン・マッカーサー財団のJoss Bleriot氏は述べています

バイオエコノミーは持続可能な社会を構築するための一つの要素ですが、それだけでは十分ではありません。今後バイオエコノミーが真に持続可能な形で発展していくことを心から願っています。

(試訳と要約は筆者によるものです。)

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