グリーンスチール 鉄鋼業での変革により気候変動対策を加速

2025 / 4 / 3 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

(Photo by Sergio Rota via Unsplash)

これまでに「色が付いた炭素?」、「水素の「色」に注意」という色にまつわる記事を書いてきました。炭素、水素に続き、今回は色が付いた「鉄」もあるというお話です。それは、「グリーンスチール(グリーン鉄)」です。

グリーンスチールとは

世界経済フォーラムは、次のようにグリーンスチールを説明しています。

Essentially, green steel is the manufacturing of steel without the use of fossil fuels.
(試訳)基本的にグリーンスチールとは、化石燃料を使用せずに鉄鋼を製造することをいう。

そしてこう続けています。

So-called “green hydrogen” is one solution that could help reduce the steel industry’s carbon footprint.
(試訳)いわゆる「グリーン水素」が、鉄鋼業界のカーボンフットプリントの削減に役立ちうる一つの解決策である。

グリーン水素というのは、以前の記事にも書いたとおり、「再生可能エネルギーによる電力を使用して水を水素と酸素に電気分解して生成される水素」を指します。グリーン水素を活用することで、グリーンスチールを実現できるようになるのです。

グリーンスチールの現状

なぜグリーンスチールが注目に値するかというと、製鉄では莫大な量の二酸化炭素(CO2)が排出されるからです。SteelWatch(スティールウォッチ)の資料によると、鉄鋼業界のCO2排出量は世界全体のCO2排出量の7%を占め、さらに製鉄所に電力や蒸気を供給する発電所や熱供給設備からのCO2排出量まで含めると11%に相当するとされています。このCO2の排出を回避できれば、大きな削減量になります。

しかし、現実にはこの移行がなかなか進んでいません。その原因としては、「鉄鋼の脱炭素化 カギを握る資金の流れ」でも書かれているとおり、コークス用炭など原料炭の開発に金融機関が投融資を続けていることが一つ挙げられます。また、世界経済フォーラムは、高炉から電炉への転換が進まないことや、グリーン水素を生産する上で必要となる大規模な再生可能エネルギーの開発が進んでいないことを挙げています。また、電炉ではスクラップ鉄を原料にして品質の低い鉄が生産されるため自動車製造用の高級鋼は供給できないと考えられていたということもありました。

ただ、この最後の点に関しては、事情が変わりつつあるとスティールウォッチが述べています。メルセデス・ベンツやゼネラルモーターズ(GM)は、電炉を主力とする鉄鋼メーカーから鋼材を調達するようになっています。

鉄は、いくらCO2排出量が多いといっても今後も生産を止めるわけにはいきません。気候変動対策として風力タービンを製造したり電気自動車を製造したりするにも必要な、現代社会を維持するのに欠かせない物質だからです。ですから、生産方法を改善するよりほかに選択肢はないだろうと思うのです。

(五頭美知/翻訳者)

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