英文の発話・引用部分を読みやすくするために コーテーションマーク(“ “)の使い方

2025 / 3 / 31 | カテゴリー: | 執筆者:Yasuko Sato

(Photo by u_zscsfn7pja via Pixabay)

英文では、引用文や発話をコーテーションマーク(“ ”)でくくるのは皆さん既にご存じのとおりです。日本語のカギ括弧(「 」)と同じように使える便利な符号ですが、文中の長すぎる引用箇所を読み飛ばした経験のある人も少なくないのではないでしょうか? 今日は米国の代表的なスタイルガイドであるThe Chicago Manual of Styleを参考に、読みやすい引用の形を見ていきます。

引用箇所を読みやすくするには

読みやすさの観点から、引用を多用しすぎないことは大切です。引用箇所が長い場合、そのまま全文を引用するのではなく、内容を要約してコーテーションマークを避けるのも一案です。また、引用には大きく分けて「run in」と「set off(またはblock quotation)」の2つの形があります。長い引用箇所には、後者を使うのが効果的です。

Run in quotation

Run inは「差し込む」「はさむ」という意味で、文中にコーテーションマークを使って引用箇所を組み込む方法です。発話でも文書からの引用でも使い方は同じで、日常的に最もよく目にする引用の形です。短い引用、特に文の一部のみを引用する時はこの書式を用います。

長めの文や、2文以上にまたがる場合、引用の間に短いコメントをはさんで2つに分けて記載しているケースもよく見かけます。

It’s going to be an unusually big development for our city, he said. I can’t deny that things aren’t worry-free.(Chennel News Asia、March 26, 2025)

Set off (block) quotation

別の文書からの引用箇所が100ワードを超えるような場合はset off quotation(またはblock quotation)を使います。100ワードというのはChicago Manualの定義ですが、学術論文などで使われるスタイルガイドのAPA styleでは40ワード以上の場合はblock quotationを使うとしています。一つのスタイルを基準や目安にしつつも、スタイルに固執しすぎず、読者の読みやすさを優先して決めてよいのではないかと思います。

Block quotationではコーテーションマークを使わず、改行して、インデント(字下げ)を入れます。

Researchers have studied how people talk to themselves:

Inner speech is a paradoxical phenomenon. It is an experience that is central to many people’s everyday lives, and yet it presents considerable challenges to any effort to study it scientifically. Nevertheless, a wide range of methodologies and approaches have combined to shed light on the subjective experience of inner speech and its cognitive and neural underpinnings. (Alderson-Day & Fernyhough, 2015, p. 957)

長い発話の場合

一人の発話が複数のパラグラフにわたる場合、各パラグラフの最初に開きの引用符を付け、最後のパラグラフの末尾にのみ閉じの引用符を付けます。

This commitment comes at a crucial time when the need for low-carbon alternatives to forest-based packaging is more pressing than ever.

By supporting the scale-up of Next Gen materials, Patagonia is not only contributing to the preservation of Ancient and Endangered Forests, it is leading the outdoor apparel sector towards a more sustainable future. (Procurement. Magazine, September 13, 2024)

普段なにげなく使っている符号も、よく調べると細かなルールがあり、読みやすさのための工夫が盛り込まれています。私自身もいち翻訳者としてルールをよく知ることで、より読みやすい文章を目指していきたいと思います。

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