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Food loss and wasteと食品ロス(続編)

(Photo by Thomas via Pixabay)
Food loss and wasteについて最初にブログを書いたのは5年前です。当時は、food lossと food wasteが正しく区別されていないことがよくありましたが、最近ではそうした間違いを見かけることも少なくなりました。一方、さらによく調べてみると、「Food loss and waste(食品廃棄物)」という言葉の定義は複雑で、注意して見る必要があることも分かってきました。
英日の定義――Food lossとfood waste、食品廃棄物と食品ロス
以前のブログの復習になりますが、英語では一般的に、サプライチェーンの上流(生産・製造・加工・流通)で発生する食品廃棄物をfood loss、サプライチェーンの下流(小売・消費)で発生するものをfood wasteと言います。
日本語にはこうした区別はなく、サプライチェーン全体で発生したものを「食品廃棄物」と言い、その中でも食べられる部分(可食部)を「食品ロス※」と呼んでいます。
※以前のブログでは「フードロス」という表現を使用していましたが、英語のfood lossとの混同を避けるため、「食品ロス」で統一しています。
「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」
農林水産省では、食品ロスを「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」に分けています。food lossとfood wasteの区別に似ていますが、英語ではサプライチェーンの下流に分類されている小売・外食産業が、日本語では上流グループの「事業系食品ロス」に入っている点が異なります。
食品廃棄物の定義
国連環境計画(UNEP)、農林水産省を参照
「食品廃棄物」の定義
国連環境計画(UNEP)が発行しているFood Waste Index Report 2024で、「Food waste(食品廃棄物)」は次のように定義されています(page v)。
“Food waste” is defined as food and the associated inedible parts removed from the human food supply chain.
(試訳)
「Food waste(食品廃棄物)」は人間の食品のサプライチェーンから外れた食品およびそれに付随する不可食部と定義される。
「不可食部」というのは、例えば骨や皮がそれに当てはまります。前述したとおり、日本語で「食品廃棄物」は可食部+不可食部を、「食品ロス」は可食部のみを指します。英語のfood loss and waste(あるいは単にfood wasteとも言う)は、可食部+不可食部を対象としており、日本語の「食品廃棄物」と同じ範囲を指します。
このように書くと、「食品ロス」とfood loss and wasteを対訳として扱うことに疑問が湧くかもしれませんが、対象が可食部である限り、問題はありません。ただし、対象が不可食部の場合は注意が必要です。日英翻訳は心配ありませんが、英日翻訳で、原文が不可食部を扱っている場合、それを「食品ロス」と訳すことはできません。
また、可食部と不可食部の定義が固定されたものでないということも、押さえておくとよいでしょう。その定義は日本の中でも変更や議論の余地(P5、P6)があり、さらに国や文化が違えば、定義が大きく異なることは容易に想像できます。また、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)はサプライチェーン全体で発生した可食部の廃棄物をfood lossと定義するなど、食品廃棄物を巡る言葉の定義には大きなばらつきがあります。
food loss、food waste、「食品ロス」、「食品廃棄物」といった言葉を訳すときや、データを比較するときは、その言葉が指す内容や対象範囲まで確認する必要があります。
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