前途多難だったCOP29 それでも一歩進んで合意された事項とは

2024 / 12 / 27 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

(Photo by Matthew TenBruggencate via Unsplash)

国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が2024年11月にアゼルバイジャン共和国(Republic of Azerbaijan)の首都バクー(Baku)で開催されました。産油国で開催されるのは2022年のエジプト、2023年のアラブ首長国連邦(UAE)に続き3年目です。

各国首脳が軒並み参加見送り

直前に行われた米国大統領選でトランプ氏が次期大統領に選出され、二酸化炭素(CO2)排出量が世界第2位である米国の来年以降の対応が心配される中、バイデン現大統領はCOP29を欠席。フォンデアライエン欧州委員長も欧州委員会の引き継ぎのため欠席、日本の石破首相も国会日程を優先して欠席。そして、CO2排出量が世界1位の中国と3位のインドの首脳も欠席、また、来年のCOP30議長国のブラジルのルーラ大統領も前月に頭部を負傷してしまったため欠席という状況でした。

それでも合意に至ったこと

このような暗雲立ち込める中での開催でしたが、資金に関して「気候資金に関する新規合同数値目標」(NCQG: New Collective Quantified Goal on Climate Finance)が合意に至りました。

decides to set a goal, … with developed country Parties taking the lead, of at least USD 300 billion per year by 2035 for developing country Parties for climate action:
(試訳)先進締約国が主導し、2035年までに開発途上締約国に対し、気候変動対策のために少なくとも年間3,000億米ドルという目標を設定することを決定

これまでの年間1,000億米ドルという目標から3倍に増え、日本円にすると46兆円あまりという規模です。しかしながら、途上国全体で気候変動に対して必要とされる額はもっと膨大であり、これに対して不十分と評されています。現に合意文書では、途上国への公的・民間資金を2035年までに年間1兆3,000億米ドルに拡大するため、すべての関係者が協力して取り組むことを呼びかけています。

また、もう一つ合意されたのが、パリ協定6条の国際炭素市場のルールです。炭素を排出削減(reduce)したり除去(remove)したりした量をクレジット(carbon credit)として国や企業が売買できるようにするため、承認や報告の行い方、クレジットの記録や報告を行う登録簿などの詳細が決定され、完全運用化が実現しました。これにより、もし今後ある国の政府がパリ協定を離脱したとしても、その国の企業は炭素クレジットを通じて気候変動対策を継続できることになるとロイターは報じています。

来年のCOP30は、ブラジルのアマゾン地域にあるベレンで開催される予定です。1年後はどのような世界になっているのか、不安も大きいですが、何か突破口が開けないものかと願っています。

(五頭美知/翻訳者)

(Photo by Matthew TenBruggencate via Unsplash)

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