水素の「色」に注意 真の気候変動対策となるのは?

2024 / 11 / 6 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

(Photo by Roman via Pixabay)

使用しても二酸化炭素(CO2)を排出せず、脱炭素化に向けて期待されている水素エネルギー。以前、「色が付いた炭素?」という記事で、「グリーンカーボン」と「ブルーカーボン」についてご紹介しましたが、水素にも色があります。

「グリーン水素」「グレー水素」「ブラウン/ブラック水素」「ブルー水素」

世界経済フォーラムのサイトで、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のエマニュエル・タイビ博士が次のように説明しています。

Green hydrogen is defined as hydrogen produced by splitting water into hydrogen and oxygen using renewable electricity.
(仮訳) 「グリーン水素」は、再生可能エネルギーによる電力を使用して水を水素と酸素に電気分解して生成される水素と定義されます。

Grey hydrogen is traditionally produced from methane (CH4), split with steam into CO2 – the main culprit for climate change – and H2, hydrogen. Grey hydrogen has increasingly been produced also from coal, with significantly higher CO2 emissions per unit of hydrogen produced, so much that is often called brown or black hydrogen instead of grey. It is produced at industrial scale today, with associated emissions comparable to the combined emissions of UK and Indonesia. It has no energy transition value, quite the opposite.
(仮訳) 「グレー水素」はもともとメタン(CH4)から生成され、蒸気でメタンをCO2(気候変動の主要因)と水素(H2)に分解したものです。石炭から生成されることも増えていますが、その場合、水素1単位あたりのCO2排出量がはるかに多くなるため、グレー水素ではなく「ブラウン水素」または「ブラック水素」と呼ばれることもあります。グレー水素は現在、工業規模で生産されており、これに伴う排出量は英国とインドネシアの排出量の合計に匹敵します。グレー水素にはエネルギー転換の価値はなく、むしろその逆です。

Blue hydrogen follows the same process as grey, with the additional technologies necessary to capture the CO2 produced when hydrogen is split from methane (or from coal) and store it for long term. It is not one colour but rather a very broad gradation, as not 100% of the CO2 produced can be captured, and not all means of storing it are equally effective in the long term. The main point is that capturing large part of the CO2, the climate impact of hydrogen production can be reduced significantly.
(仮訳) 「ブルー水素」はグレー水素と同じ工程を経ますが、水素がメタン(CH4)または石炭から分解される際に発生するCO2を、回収して長期間貯留するのに必要な技術が追加されます。発生するCO2を100%回収することはできず、すべての貯留方法が長期的に同等に効果的であるわけではないため、一つの色ではなく非常に幅広いグラデーションがあります。重要なのは、CO2の大部分を回収することで、水素製造による気候への影響を大幅に削減できるということです。

真の気候変動対策となるのは「グリーン水素」

このように、同じ「水素(H2)」という物質でも、気候変動を抑える効果は製造方法によって異なります。水素なら何でも良いというわけではなく、水素に関するニュースを読む際には注意が必要です。世界経済フォーラムの別のウェブページ(2021年7月27日付)では、本当に気候に影響を及ぼさずに済むのは再生可能エネルギーで製造した「グリーン水素」のみで、2021年7月の時点では水素製造量の0.1%しか占めていない、と書かれています。

今夏の北半球全体の酷暑や、猛威を増すハリケーン、世界各地の洪水被害など、昨今の気候変動による異常気象がいかに人々の暮らしに甚大な影響を及ぼしているかを見れば、化石燃料からの脱却は待ったなしで進めるべきです。再生可能エネルギーの生産コストが低下を続けていることも追い風にして、今後のグリーン水素の増産に大いに期待したいと思います。

(五頭美知/翻訳者)

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