世界に遅れを取る日本のネオニコチノイド規制

2024 / 10 / 1 | カテゴリー: | 執筆者:Yasuko Sato

(Photo by zefe wu via Pixabay)

エコネットワークスでは2017年、「ネオニコチノイド系農薬の環境リスク」の翻訳をご支援しました。その後7年経ちましたが、ネオニコチノイドをめぐる状況はあまり改善しているように見えません。ネオニコチノイドについて、今一度、理解を深め、前に進むための糸口を探ってみたいと思います。

ネオニコチノイドとは

ネオニコチノイド系と呼ばれる化合物には、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラムの7種類があります。浸透移行性(根や葉から吸収され、植物全体が殺虫効果を持つ)が高く、作物を害虫から長く守れる一方、洗っても落とすことができません。

「Silent Spring 2.0」会議

2024年5月、米国 シカゴで「Silent Spring 2.0」会議が開催されました。この会議では、ネオニコチノイドが人の健康や野生生物、地下水や表流水に影響を与える可能性について研究者らが議論しました。最近の動物研究では、一部のネオニコチノイドに関する米国環境保護庁(EPA)の現在の安全基準が、実際に人々の安全を十分に守れる数値より160倍も高い可能性が示唆されました。また、ネオニコチノイドは生殖に関する健康に影響を与えるほか、神経毒性があり、子どもの脳の発達にも影響する可能性があるなど、新たなエビデンスが数多く示されました。

世界は規制へ、日本は緩和へ舵を切っている

日本の食べ物は安心・安全と思いがちですが、ネオニコチノイドを含め、日本の農薬規制は世界各国より緩いものが多く、国内向けの基準でつくった作物が、輸出先国の基準を満たせないケースも少なくありません。ネオニコチノイドは、生態系、子どもの発達、不妊など、私たちの暮らしに多大な影響を与えている可能性があります。もっと関心を寄せ、使用を減らすよう声を上げる必要があると感じます。その害が完全に証明されるまで待っていては、手遅れになりそうです。

市民と組織の力を集結しよう

ネオニコチノイドはとても身近なところで使われています。家庭用製品には、ゴキブリやコバエ用の殺虫剤、ペットのノミ取り、ガーデニング用農薬などがあります。

また、主食のお米を栽培する際のカメムシ防除でも広く使用されます。カメムシがお米を吸うと、お米に黒い点ができ、米の等級が下がるためです。田んぼに撒かれた農薬は、河川へ、そして海へと流れていきます。この黒い点は、食味や安全には全く影響がないため、農薬を止めやすい領域に思えます。そして、止めることによる人と自然環境へのプラスのインパクトはとても大きなものになるはずです。

JA佐渡(佐渡農業協同組合)は2015年にネオニコチノイド系農薬の米作向け販売を中止し、2018年からは、ネオニコチノイド系農薬不使用の米のみを販売しています。2008年に始まったトキの放鳥が市民の機運を高め、JAという組織が動いたことが、地域全体を巻き込むスピーディーな動きにつながったと考えられます。

市民が声を上げ、企業が脱ネオニコに取り組めば、環境と社会を大きく変えることができるのではないでしょうか。

 

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