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酷暑をもたらす現象 ヒートドーム(heat dome)
「10年に1度程度」の暑さになると気象庁が予想した2024年の日本の夏。本当に酷暑の夏になっています。7月29日に栃木県佐野市で41.0℃を記録し、国内の過去最高(2018年の埼玉県熊谷市および2020年の静岡県浜松市の41.1℃)まであと0.1℃という暑さとなりました。
日本だけではありません。例えばアメリカ。7月7日に、ネバダ州ラスベガスでは48.9℃、同州との州境にあるカリフォルニア州デスバレーでは53.9℃まで上がりました。この原因として、「heat dome(ヒートドーム)」という言葉がよく使われています。
「ヒートドーム」とは
ヒートドームというのは、BBCのサイトによると、「上空の高気圧が熱い空気を地表近くに押し下げ、固定させる現象のこと」とされています(記事内の図「ヒートドームはどのようにしてできるのか」を参照ください)。この現象により、熱波の期間が長くなり、激化する可能性があります。
米国以外でも「ヒートドーム」という言葉で高温の理由が説明されているか調べてみたところ、古いところで2016年7月21日にクエートで54℃、イラクで52.6℃が記録された際の記事(朝日新聞社)が見つかりました。
日本国内では、今年の酷暑のメカニズムを「ヒートドーム」という言葉で説明しているのは目にした記憶がありません。しかし、三重大学の立花義裕教授によると、日本でもヒートドームは起きているようです。
出典:羽鳥慎一モーニングショーのXポスト(@morningshow_tv)
「熱波」について
また、もう一つ、「heatwave(heat wave)」(熱波)という言葉が、特に欧米などの猛暑を伝える際によく使われていますが、日本の猛暑についての日本国内の報道ではあまり目にしないのも気になっていました。
heatwaveは、世界気象機関(WMO)で以下のように定義されています。
A heatwave can be defined as a period where local excess heat accumulates over a sequence of unusually hot days and nights.
(仮訳)熱波は、珍しいほど暑い昼夜が連続し、局所的な異常な高温が蓄積する期間として定義できる。
この定義に基づけば、猛暑日が連続した際など、日本も「熱波が襲来」と表現しても良いと思われます。事実、海外メディアは、日本の猛暑を紹介する記事でheat waveという言葉を使用しています。以下、いずれも2022年6月の記事タイトルです。
Japan tops 104 degrees for first time in June amid record heat wave
(仮訳)日本に記録的な熱波、6月で初めて華氏104度(摂氏40℃)を上回る
Tokyo experiences worst June heat wave since 1875
(仮訳)東京、6月としては1875年以降で最悪の熱波
気候変動が進み、それが日々の天気、市民の生活にも影響を及ぼす中、「ヒートドーム」「熱波」といった言葉を効果的に用いれば、ふんわりと「しばらく暑い日が続きます」と言うよりも、事態の深刻さ、根本的な対策をとるべき必要性が端的に伝わるのではないでしょうか。
(五頭美知/翻訳者)
(Thumbnail photo by Akanda Kilicarslan via Unsplash)