「気候不安症(Climate anxiety)」 不安を煽らない発信を

(Photo by Steve Crowhurstastize via Pixabay)

日経新聞(2023年10月9日)でも取り上げられていた気候不安症(Climate anxiety)。記事によれば、「未来への不安や地球の将来についてどうすることもできないという感情を慢性的に抱いている状態」を意味します。日本の若者たちも、そういった不安を抱えているのだろうかと気になりました。

「地球温暖化(global warming)」は「気候変動(climate change)」と呼ばれるようになり、今では「気候危機(climate crisis)」、さらには「地球沸騰化(global boiling)」とまで表現されるようになりました。危機意識を持つことは大切ですが、こうした表現を含め、溢れる情報がむやみに不安を煽っているのではないかという危惧を、最近感じています。

世界には様々な問題がある

今でも、戦争が続いており、飢餓はなくならず、世界は問題で溢れています。また、日本の社会も、格差の広がりや貧困、環境問題、その他多くの問題を抱えています。今も昔も、そしておそらく未来も、世の中は問題だらけです。こうしてみると、とりわけ気候変動の問題だけが若者に不安症を引き起こしていると考えるのは少し不思議で、事態が深刻だからというよりは、社会の空気が不安を生み出している側面があるのではないかと考えています。

地震に対する姿勢から学ぶ

今年は元旦から能登で地震があり、甚大な被害が発生しました。2011年の大震災はもとより、毎年のように、日本のどこかで大きな地震が起きています。そして南海トラフ地震はほぼ確実に数十年以内に起こると言われています。それでも、もちろん個人差はあると思いますが、いつか来るであろう地震が不安で将来を悲観するというような風潮にはなっていません。

メディアは、近い将来に大地震が発生する可能性が高いことを率直に伝え、個人や組織は、来るべき事態に備え、食料や防災用品を揃えたり、避難訓練を行ったり、建物の耐震対策をしたり、建設的に行動しているように見えます。

地震に対する私たちの姿勢は、「人事を尽くして天命を待つ(人間として出来るかぎりのことをして、その上は天命に任せて心を労しない[広辞苑 第七版])」という言葉がよく合います。過度に心配することなく、最善を尽くして今できることをする。気候変動も同じ心持で受け止めるのがよいのではないでしょうか。

気候変動は地震に比べて人知の及ぶところであるがゆえに、行動を促そうと、結果的に危機感を煽るような発信になりがちなのかもしれません。そうした背景を心に留め、危機意識を持ちながらも、煽らない、希望につながる発信を模索していきたいと思います。

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