翻訳者として学び続ける 20年目を迎える節目

(Photo by Tim Mossholder via Unsplash)

先日LinkedInを見ると、エコネットワークスで仕事を始めてから19年経ったとの通知がありました。当時はフリーランスの翻訳プロジェクトマネージャーとしてスタート。今日まで長く続いていることに自分自身が驚いています。でもそれは、サステナビリティ関連の翻訳を通じて社会の最新情報に触れられるからだという確信もあります。翻訳するために、サーキュラーエコノミーやグリーン水素など、新たな考え方や技術が登場・普及するたびに調べて、学んでいく過程が楽しいからです。

チームで学ぶ

この学びの過程は楽しい反面、苦しいときもあります。探しても探してもその言葉が表す意味が解らない、定まった訳が見つからない。そんなときはどうするか?

私はまず、チームのみんなに相談します。エコネットワークスでは、3~7人ほどで一つの案件に取り組むことが多いので、手分けして調べてくれたり一緒に考えてくれたりし、たいていの場合は「これだね!」という訳が見つかります。それでもどうしても絞り切れないときはみんなで議論し、チームとしての提案訳を決め、調べた結果とともに提出します。提案どおり承諾いただけるとホッとしますし、そうでなかった場合はクライアントが選んだ選択肢が大切な示唆となります。しばらくして「この前の訳、今の仕事でも出てきました!」とチームメンバーから連絡をもらうと、答え合わせできた思いがして、エアーでハイタッチです。

クライアントとともに訳す

悩ましい別のケースとして、修飾部がどの言葉や句に係るのか判断できない、あるいは複数の選択肢があることがあります。そんなときは書いた人に聞くのが一番です。やり取りは増えますが、満足いただける訳文とするための大切なプロセスです。私たちが考え切れていなかったことが明らかになった場合は、説明に割いてくださった時間とエネルギーに感謝して、私たちも納得して訳を練り上げることができます。

また、脚注にある参考文献の内容と本文に食い違いがあることもたまにあります。時期が違う(例:20XX年が1年ずれている)、数値が違う(例:XX%が違っている)などで、正しい情報を教えていただき、訳文に反映します。クライアントから感謝されることがあっても、疎まれることはありません。

疑問が残っているままにしない。これは先輩の翻訳者さんから学んだことで、納期に追われる中でも綿密に調べた上で「おかしい」と声をあげる姿勢は、チームで大切にしていることの一つです。当然のことなのですが、忙しさや時間に追われると抜けてしまいがちなので、注意しています。

専門家のピアレビューから学ぶ

2022年からGRIスタンダードの日本語版を担当させていただいており、新たな学びの機会となっています。サステナビリティ報告の国際基準の訳を担当することは、とても大きな責任であり、全員であらゆる資料を調べた上で訳を決めていきます。このプロジェクトで専門家のピアレビューを受けられることはこの上なく貴重で、用語の細やかな使い分けや、言葉の選び方などを学んでいます。もちろんチームメンバーとも共有して、全員で今後の訳にいかしていきます。

いよいよ20年目なのか、と思います。AI翻訳も精度が上がり、やるなあと思うことも増えてきました。一方で、文脈を踏まえて訳文を整えていくプロセスはまだまだ必要です。高品質の訳文をお届けできるよう、気持ちを引き締めてこれからも仲間とともに学びを続けます。

 

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