Translators in Sustainability
期待が高まるペロブスカイト太陽電池
最近、新しいタイプの太陽電池である「ペロブスカイト太陽電池」という名前をあちこちで目にするようになりました。これは一体どのようなものなのでしょうか。
「ペロブスカイト」の良さ
翻訳者としてはまず、語源が気になります。「ペロブスカイト(perovskite)」は、日本語で「灰チタン石」とも呼ばれる鉱物を指します。ロシアの鉱物学者ペロウスキー(Perovsky)にちなんで命名されたものです。そしてこの鉱物の独特の結晶構造は「ペロブスカイト構造」と呼ばれます。ペロブスカイト構造をもつ化合物が光発電する能力を発見し、2009年に初めてペロブスカイト太陽電池の作製を論文発表したのは、日本の桐蔭横浜大学の宮坂力(つとむ)教授のチームでした。
ペロブスカイト太陽電池の良いところは、現状のシリコンを用いたソーラーパネルと違って、薄くて軽くて曲げられるシート状にできるため、設置場所が格段に広がるところです。これまで日本でメガソーラーといえば、森林を広大に伐採して山肌に設置したり、川岸の自然堤防を掘削して設置したりするケースもメディアで目にし、自然保全や防災の観点からちょっと不安を感じていました。しかし、軽量で柔軟性があるペロブスカイトであれば、例えば建物の壁や窓など、人工物を利用して設置することができます。
そのほかのメリットとして、資源エネルギー庁は、製造工程が少ないため低コスト化が見込めることや、主要な原料であるヨウ素は日本が世界シェアの第2位を占め確保しやすいことも挙げています。
また、エネルギー変換効率も、宮坂教授の最初の論文の時点では3%台でしたが、今では25%を超え、シリコン太陽電池と比べて遜色ないレベルになってきています。
今後の展望
すでに実証実験がいくつか始まっています。KDDIは2023年12月、電柱型の基地局での実証実験開始を発表しました。東京都も2024年3月、都庁の展望室内で実装検証を始めています。
実用化に向けての今後の課題としては、耐久性を上げること、大量生産技術を開発すること、また、現在は材料に鉛が使われているため鉛を使わない製造方法を開発することなどが言われています。
世界の気温上昇を1.5℃に抑えるためには化石燃料の使用を減らして再生可能エネルギーを拡大させることが必要で、ソーラーはその中心的な存在であるため、設置場所を増やせるこのペロブスカイトの技術に期待したいと思います。
(五頭美知/翻訳者)