持続可能な未来につながる気候教育とは

2024 / 6 / 7 | カテゴリー: | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto

(Photo by Ismail Salad Osman Hajji dirir via Unsplash)

昨年開催されたCOP28で注目を集めたテーマの一つ、気候教育。
SDGsでも「持続可能な開発のための教育」に関する目標が掲げられており、気候危機に対処して人類が未来を生き抜くためには、教育が重要なカギを握るとの認識は広がりつつあります。一方、ユニセフの調査によると、カリキュラムに気候教育が組み込まれている国は半数程度、若者の7割は気候変動について説明ができない、気候変動について教えられると回答した教員は3割に満たないなど、気候教育の現状には改善の余地が多く残されているようです。

分野を超えた包括的アプローチ

そうした課題を背景に、ユニセフは2022年、各国政府や関係機関、市民社会、若者、専門家や研究者、民間セクターなどあらゆるステークホルダーが参画するプラットフォームGreening Education Partnership(GEP)を立ち上げました。

GEPが目指すのは、気候変動をはじめとする地球規模の課題に対処し、包摂的で持続可能な未来を実現するために必要な知識、技能、考え方をすべての学習者が習得できるようにすること。

そのための教育を実現するため、GEPでは以下のように分野を超えたアプローチを目指しています。

The practices … adopt an interdisciplinary approach across all subjects, not only looking at the scientific facts of climate change, but addressing the social economic and behavioural facets of climate justice, eco-anxiety, action-based solutions and ensuring that it is contextualized to learners’ real-life experience and aspiration.
(試訳)実践するにあたっては、あらゆる分野にまたがるアプローチを採用し、気候変動の科学的事実について考えるだけでなく、気候正義、気候不安、行動に基づく解決策といった社会経済的・行動的側面について取り上げ、学習者の実生活での経験や希望に見合う内容とします。

気候変動に伴って生じうる問題は多岐にわたるため、あらゆる側面から全体を見渡して問題を解決する能力を身につけることが気候教育で重要とされるポイントの一つです。

生涯を通じた学び

GEPのアプローチでは、「学校」「カリキュラム」「教員研修・教育システム」「地域社会」を4つの重点領域として、気候教育の仕組みの構築や強化を図っていくとしています。

この4つの領域でGEPが掲げるビジョン からは、life-long learning(生涯学習)がキーワードとして見えてきます。

気候変動の影響はこの先長きにわたって続くため、学校にいる間に学んで終わりではなく、地球上に生きている限りすべての人が向き合っていかなければなりません。

GEPのアプローチとその背景にある考え方を読み取ると、子どもや若者が気候教育を受けることは彼ら/彼女らの権利であるとともに、そのための仕組みを整え、適切な教育を提供すること、また自らも生涯にわたり学び続けることは、地球に生きる私たち一人ひとりの責任でもあると感じます。

※和訳はすべて筆者による試訳です。

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