Translators in Sustainability
言葉の風向きを変えよう 女性リーダー育成に向けた東京大学の取り組み
東京大学では、女性リーダー育成に向けた「UTokyo男女⁺協働改革#WeChange」という取り組みを進めています。その一環として、今年5月、学内で「なぜ東京大学には女性が少ないのか?」という問いが投げかけられました。そしてその後、問いに対する答えのひとつとして、東大の学生・研究者や卒業生たちが実際に受けたことのある言葉をまとめたポスターが掲示されました。
「なぜ東京大学には女性が少ないのか?」東大の女性たちが実際にかけられてきた言葉を掲出
“Why are there so few women at the University of Tokyo?” A revealing poster displays real comments made to women on UTokyo campuses
女性の意欲を削ぎ、未来に影響を及ぼす「言葉の逆風」(verbal headwinds)
東大生ではなくても、日本の多くの女性は、似たような言葉を受けた経験があるのではないでしょうか。同大学は、「女性の意欲を削ぎ、未来の可能性にまで影響を与える恐れのあるこうした言葉を『#言葉の逆風』と名づけ可視化する」としています。
実際に、高等教育の選択では大きな性差が見られます。日本は、OECD加盟国中では男女ともに数学が得意な国であるにもかかわらず、理系分野の高等教育機関における女性の比率は最下位です。
他方、海外に移住する日本人に占める割合は、男性よりも女性の方が高く(2023年は62%;外務省「海外在留邦人数調査統計」より算出)、ある記事によると、2001~2021年にカナダに移住した日本人の76%は女性です。移住の理由は様々でしょうが、同じ記事には、「カナダ(海外)にいる方が自由だと感じる」「日本の文化には息苦しい面がある」という女性の声も紹介されています。移住という選択の背景にも、言葉の逆風の影響があるのかもしれません。
逆風を弱め、風向きを変えるには
前出の東大のサイトに、ニューヨーク州弁護士の山口真由さんが以下の言葉を寄せています。
……言葉さえ変わればそれで終わりではないけれど、可能性の翼の本来は力強い羽ばたきが言葉の逆風で抑え込まれないようにと願っています。
……While changing how we speak alone won’t solve everything, I hope it can at least help unfurl our wings of potential, allowing us to soar high, unimpeded by the verbal headwinds.
日本社会の中で、女性が可能性の翼を広げられるようにするには、どうすればよいのでしょう。
逆風が吹く中で育ち、生活してきた今の大人世代には、自分ではそうと気づかないバイアスが培われている場合があります。ジェンダーバイアスが潜む言葉を繰り返し聞いてきたために、言葉に対する感度も鈍くなっているかもしれません。バイアスに気づき、是正していけるように、まず言葉に対する意識を高める必要があります。現在の、そして次の世代が暮らす社会の逆風を弱め、風向きを変えていくための努力が、今、私たち一人ひとりに求められています。
(#言葉の逆風のポスターやリーフレットは、こちらのサイトからダウンロードできます。)