Translators in Sustainability
単に「予想する」だけではない、anticipateの持つニュアンス
(Photo by astize via Pixabay)
anticipateは「予想する」という意味でよく使われています。expectと置き換えることができ、どちらでも差し支えない場合もあれば、anticipateを使う方が表現としてより適している場合もあります。今回は、anticipateとexpectの違い、そしてanticipateという語の持つニュアンスについて、掘り下げます。
expectとanticipateの文法上の違い
まず、expectとanticipateの文法上の重要な違いとして、後ろに動詞を置く場合、expectでは「to 動詞」と続くのに対し、anticipateの後ろには動名詞の「ing形」がきます。
We expect to reduce our energy consumption by 40% by 2030.
(2030年までにエネルギー消費を40%削減する予定です。)
We anticipate saving around 20,000 MWh of energy per year.
(年間およそ2万MWhのエネルギーを削減する見込みです。)
We expect reducing…や、We anticipate to save…のような形にはなりませんので注意が必要です。
expectとanticipateの意味の基本的な違い
expect
客観的に見て(過去の経験、論理的な推論、確立したパターンなどにより)、高い確率でそうなると予想する場合に使います。
anticipate
主観的な願望や期待からそうなると予想する場合に使います。
次の2つの文はどちらも文法上問題ありませんが、上記を踏まえると、ニュアンスが少し異なります。
① We expect (that) the economy will improve.
② We anticipate (that) the economy will improve.
①では、経済が上向くことが高い確率で予想されるのに対し、②は①より確信の度合いが低く、経済が上向くのではないかという期待や、そうなってほしいという願望が垣間見えます。
「備え」のニュアンスを持つanticipate
expectは何かが起こるという単なる予想(事実)を述べるのに対し、anticipateは何かが起こることを予想し、それに備える、というニュアンスがあります。anticipateは「期待・懸念の両方に用いられ」、「予想される事態への心構えを暗示」します(新グローバル英和辞典)。
以下の文ではexpectよりanticipateの方が適しています。
The purpose of planning is to anticipate problems before they arise.
(計画を立てるのは問題が生じる前にそれを予測するためだ。)
A risk resilient organization can anticipate risks and minimize losses.
(リスク対応能力の高い組織は、リスクを予見し損失を最小限に抑えることができる。)
We need to anticipate future challenges and draw up appropriate action plans.
(今後生じる課題を予測し、適切な行動計画を策定する必要がある。)
anticipateは不確かな未来について予測し、それに対する心積もりを表すときに、使いやすい単語と言えそうです。あまり頻繁に目にする印象はありませんが、改めて調べてみると、サステナビリティ分野での使用例も少なくなさそうです。単語の正確なニュアンスを理解し、的確な場面で上手く使えば、原文の意図を正確に表現するのに役立ちそうです。
※英文の訳はすべて筆者による試訳です。