昆虫たちの危機 その激減を数字で見る

2024 / 4 / 1 | カテゴリー: | 執筆者:Yasuko Sato

(Photo by Myriams-Fotos via Pixabay)

千葉の里山に出入りするようになって10年近く経ちますが、当初は驚くほどたくさんいたシオカラトンボとジョロウグモの数が、ここ1、2年、ぐんと減っていることに気づきました。子どもの頃と比べて、あるいはここ数年で、皆さんの周りでも、虫たちの様子が変わったなと思うことはないでしょうか?
世界的に昆虫が減少していることは以前から知られていますが、森林破壊やCO2の排出といった他の環境テーマに比べると、昆虫に関する情報は少ない印象があります。ですが、昆虫は激減ともいえるスピードで、その数も多様性も減少しており、様々な影響が懸念されます。今回は、ロイターグラフィックスのウェブページ「The collapse of insects」に記載されている内容を中心に、昆虫の現状やその影響を数字で見ていきましょう。

Abundance、Biomass、Diversityがすべて減少

昆虫の減少は個体数(abundance)、生物量(biomass)、多様性(diversity)のすべての側面で起こっています。上述のウェブページによれば、世界の昆虫の個体数は年間1~2%減少しています。2020年の研究では、過去150年間ですべての昆虫種のうち5~10%が失われたとされています。また、2017年のドイツの研究では、有翅昆虫類の生物量が過去27年間で75%以上も減少したという結果が示されており、2023年8月に公表された別の研究でも、こうした傾向が続いていることが明らかになっています。

昆虫の激減は食料不足や生態系の変化に直結

昆虫は、人が食べる農作物の75%、自然界の植物の80%の受粉を担っています。生態学者のDave Goulson氏は、昆虫が減れば、農作物の収穫量が減り、私たちの食料も減ることになり、かなり悲惨な結果となる、と述べています。
また、昆虫の捕食者である鳥などの生き物が減ることにつながり、生態系全体にとっても極めて重大な問題です。

昆虫にもっと関心を

2021年の国際自然保護連合(IUCN)のデータによると、既知の100万種の昆虫のうち、保全状況が評価されているのは1%に過ぎません。でもこれは、数で見れば、評価した鳥類の数とほぼ同数です。昆虫の数は非常に膨大であるにもかかわらず、哺乳類と比べ、注目を集めにくく、研究助成金は少なくなりがちです。冒頭のロイターのサイトの「Research bias」セクションによると、哺乳類が属する脊椎動物と、昆虫が属する無脊椎動物の研究助成金には500倍の差があります。昆虫が生態系の中で果たしている役割を考えれば、絶滅危惧種といった特定の生き物の保全にとどまらない、昆虫全体を守る取り組みが急がれます。

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