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COP28、UAEコンセンサスを採択して閉幕
2023年11月30日から12月13日まで、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)が開催されました。当初12月12日までの予定だった会期を1日延長することにはなりましたが、無事に「UAEコンセンサス(UAE Consensus)」という最終合意文書が採択されて閉幕しました。
化石燃料をどうするのか
この合意文書には、「Transitioning away from fossil fuels in energy systems, in a just, orderly and equitable manner, accelerating action in this critical decade, so as to achieve net zero by 2050 in keeping with the science(仮訳:科学に則り2050年までにネットゼロ排出を達成するように、この重要な10年間に行動を加速させ、公正で秩序ある衡平な方法で、エネルギーシステムにおいて化石燃料から脱却すること)」が盛り込まれました。この文言をめぐっては、当初案の“段階的廃止(phase out)”という文言が産油国の反対を受けてトーンダウンしたという経緯が伝えられていますが、化石燃料という言葉が初めて明記されただけでも一つの成果といえると評価されているようです。
グローバル・ストックテイク
今回は、2015年のCOP21で採択された「パリ協定」第14条で定められた「グローバル・ストックテイク(Global Stocktake: GST)」が初めて行われました。
stocktakeは、コリンズ英語辞書(Collins Dictionary)で次のように説明されています。
noun
3. a count and check of goods on hand in a shop or business
(仮訳:店や企業の保有する商品の計数と確認)
4. a reassessment of one’s current situation, progress, prospects, etc
(仮訳:現在の状況、進捗、見通しなどの再評価)
今回はこの4.の意味で、世界全体の気候変動対策の進捗状況の評価が行われました。
その結果、現在の削減目標では気温上昇が3℃近くになることが指摘されました。気温上昇を1.5℃に抑えるためには、2030年までに温室効果ガス排出量を2019年比で43%減、2035年までに60%減とする必要があります。各国は今回のグローバル・ストックテイクを考慮した上で、次回の「自国が決定する貢献(NDC)」を提出する必要があります。
そして、1.5℃目標を達成するために、2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍、エネルギー効率を2倍にすることも示されました。
その他の成果
また、今回のCOP28では、COP27で創設が決まっていた「損失と損害」基金についても、運用ルールが決定されました。
産油国UAEでの開催、しかも議長を務めるスルターン・アル・ジャーベル産業・先端技術大臣はアブダビ国営石油会社のCEOということで、当初は成果を挙げられるのか懸念もありましたが、現状から後退させることはなく次につながったといえそうです。
次回のCOP29は来年11月、アゼルバイジャンで開催されます。
(五頭美知/翻訳者)