Translators in Sustainability
コモンとしての森 これからの森林保護のかたち
森林保護といえば、皆さんはどのような活動を思い浮かべるでしょうか。植林活動や間伐などの手入れ作業かもしれません。経済本としては異例のベストセラーとなった斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』に「コモン」という概念が出てきますが、この概念は、植林よりも一歩踏み込んだ、新たな森林保護の道を示してくれています。
「コモン」て何だろう?
英語の「common」は形容詞で使われる場合が多く、「共有の」「共同の」「共通の」という意味があります。また、名詞で「共有地」「共有権」といった意味でも使われます。
カタカナの「コモン」は、誰のものでもない、みんなの共有財産という意味で使われています。コモンの考え方は、実は日本人にとって、新しい概念ではありません。例えば、入会(いりあい)は「一定地域の住民が特定の権利をもって一定の範囲の森林・原野に入り、木材・薪炭・まぐさ等を採取するなど共同利用すること(広辞苑 第七版)」を指しますが、この入会の文化は、まさにコモンと言えます。
なぜコモンが大切なのか
国土の7割近くを森林として維持している日本。入会(いりあい)の文化は、森林を守る大きな力となってきたに違いありません。けれども、森林の担い手が減少し、そうした文化が廃れてしまった今、日本の森林は大きな危機に直面しています。
私の住む千葉県では、南部にある鴨川市で、メガソーラーの建設計画が問題になっています。地域外の事業者が購入した山林の伐採面積は東京ドーム32個分。山を60m削り、谷を80m埋め、起伏のある山々を平らにしてソーラーパネルを敷設する計画です。この事業が周辺地域に与える影響は未知数です。水の流れが変わったり、水量が減ったりしないか、土砂崩れは大丈夫か、海にはどのような影響が出るのか。この地域で、これからも人々が農業や漁業を営み、暮らすことができるのか、とても心配です。
こうした外部の人や企業による土地の開発や買収は、千葉県だけでなく、日本各地で行われています。太陽光や風力発電などの「再エネ」開発であることが、それを正当化するための隠れ蓑になっている印象もあります。こうした開発から森を守ることは急務と言えます。
これからの、新しい取り組み
森林を守っていく、新しい仕組みの構築が求められる中、NPOの「コモンフォレストジャパン」は、森林を共同購入し、共に管理する取り組みを進めています。その仕組みは次のようなものです。活動に参加したい人は、申し込み後に面談を経て、入会金を払い会員となります。会員になると、森林の再生活動、自然観察会、草木を使ったワークショップやセミナーなど、森の様々な活動に参加することができます。現在は東京都の裏高尾が活動拠点となっており、エコネットワークスにも参加している仲間がいます。地域のため、次の世代のため、こうした活動が今後、一刻も早く全国に広がっていく必要があると、強く思います。