食料不安の背景にある相関を考える

2023 / 10 / 4 | カテゴリー: | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto

食料安全保障情報ネットワーク(FSIN)が世界の食料危機についてまとめた最新の報告書『Global Report on Food Crises 2023』 は、急性食料不安(acute food insecurity)に直面する人々が増えている現状を伝えています。急性食料不安とは、「十分な食料を摂取できないことで、その人の生命や生活が差し迫った危険にさらされること 」。身近なところでは依然として食品ロスが問題視されている中、この事実はショッキングであり、世界全体を見て不均衡の是正に取り組む必要がありそうです。

紛争、経済危機、異常気象――絡み合う複数の要因

報告書によると、2022年に急性食料不安に陥った人々は、58の国と地域で約2億5,800万人に達しました。前年と比べ、国の数、人の数ともに増えており、世界全体で状況が悪化傾向にあります。
また食料危機の要因として、経済危機(economic shocks)、紛争と不安定(conflict/insecurity)、異常気象(weather/climate extremes)の3つが挙げられており、これらは次のような関係にあると指摘されています。

…the root causes of food crises are complex and interlinked: conflicts, national and global economic shocks and weather extremes represent cascading, inter-related and mutually reinforcing risks that drive acute food insecurity and hunger.
(試訳)・・・食料危機の根本原因は複雑で相互に関連し合っている。紛争、国・世界規模での経済ショック、そして異常気象は、連鎖的に発生して相互に関連し強化し合うリスクであり、急性食料不安および飢餓を助長するものである。

上記抜粋文にて太字で示した表現と関連するものとして、同報告書ではintertwined(絡み合った)やmultidimensional(多次元の/多面的な)も確認できました。
一見関係のない独立した要因に見えても、実際にはそうではなく、相互に作用し合う関係にある点を踏まえた上で課題解決にあたることが重要だと言えそうです。

人道・開発・平和の連携が問題解決のカギ

報告書はまた、食料不安や飢餓が一部の国・地域に集中している点も指摘しています。なかでも、輸入への依存度が高く、世界の食料価格の影響を受けやすい最貧国では、パンデミックによる経済不安やウクライナにおける戦争が飢餓につながるほどの影響を及ぼしていると言います。

こうした事態へのアプローチの一つとして提案されているのが、humanitarian-development-peace nexus(人道・開発・平和の連携)です。急性食料不安をはじめ、最も深刻な影響を受けているのが貧しい国々である点を念頭に、そうした国々のための人道・開発支援や平和貢献を軸とする解決策が求められています。開発の恩恵が平等に行き渡り、人々が人間らしく平和に暮らせる世の中を実現できれば、食料危機などの複雑な問題も解決に向かうことが期待できるのかもしれません。

nexusの定義は、an important connection between the parts of a system or a group of things(試訳:システムを構成する要素あるいは物事の集合体の間にある重要なつながり)(Cambridge Dictionary より)。
世界で生じる問題を考えるとき、この言葉が意味する「つながり」を常に意識しておくことが大切です。

※試訳は筆者によるものです。

Photo by Craig Manners via Unsplash

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