First movers and doers 気候野心サミットのキーワード

2023 / 9 / 11 | カテゴリー: | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

国連総会ハイレベルウィーク内の9月20日、「気候野心サミット(Climate Ambition Summit)」が開催されます。アントニオ・グテーレス事務総長の6月の会見をはじめ、さまざまな媒体で使われているキーワードは「first movers and doers」。国連広報センターサイトにある国連副事務総長のブリーフィングでは「ファースト・ムーバーおよびドゥーワー(先行者および実行者)」となっています。ちょっと聞き慣れないこの言葉、どのような場面で使われ、またサミットではどのようなメッセージが込められているのでしょうか。

元は広告・マーケティング用語・First mover

英英辞典では、first moverを次のように定義しています。

a company that is the first to sell a new product or provide a new service, when there are no other competing companies
試訳:競合他社が存在しない状況で、新製品を最初に販売したり、新しいサービスを提供したりする企業

つまり、市場にない新しい製品・サービスの提供者を意味します。

一方、2021年11月、COP26において米国政府が世界経済フォーラム(WEF)と協力して立ち上げたイニシアティブ「First Movers Coalition」では、2050年までにネット・ゼロを達成するために必要な重要技術の早期市場創出に向け、率先してその購入を宣言する世界の主要グローバル企業を意味します。

コミットメント技術対象としており、2050脱炭素化達成向け強化いけるよう市場2030まで創出すること目標ます発足メンバ、航空・海運・トラック輸送・鉄鋼部門うち少なくとも1以上公約表明ます。日本は2022年5月に、戦略パートナー国としてこのイニシアティブに参画しています。

Doersとなることの重要性

こうした動き(first movement)があるものの、現実には例年にない高温や乾燥、豪雨、海水温の上昇といった気候変動の影響がもたらす山火事や洪水が次々と起こっています。脱炭素化を宣言する、目標を設定する、イニシアティブに参加するだけでは、間に合わないのではという危機感がグテーレス事務総長のスピーチから読み取れます。

I am very worried about where the world stands on climate. Countries are far off-track in meeting climate promises and commitments. I see a lack of ambition. A lack of trust. A lack of support. A lack of cooperation. And an abundance of problems around clarity and credibility. The climate agenda is being undermined. At a time when we should be accelerating action, there is backtracking.
試訳:私は、気候に関する世界の状況を非常に心配しています。 各国は、気候に関する約束やコミットメントを達成するための道筋から大きく外れています。 野心が欠けている。 信頼が欠如している。 支援が足りない。 協力が欠けている。 そして、明確さと信頼性をめぐる問題は山積みとなっています。 気候アジェンダは蝕まれています。 行動を加速させるべき時に、状況は後退しているのです。

グテーレス事務総長のスピーチは、平易な言葉とシンプルな構文でリズミカルなので、声に出して読みたくなります。しかしその内容は極めて重く、上述の導入部分の後も、化石燃料は土の中に埋められたままにすべき、OECD諸国では2030年、地球上で2040年の石炭全廃を訴えています。また金融機関に化石燃料産業の移行を奨励するよう促し、石炭関連のあらゆる資金提供を止めることは正しい、その手を止めるべきではないと説いています。

スピーチは以下の言葉で締めくくられます。

Now must be the time for ambition and action. I look forward to welcoming first movers and doers at my Climate Ambition Summit in September. The world is watching – and the planet can’t wait.
試訳:今こそ野心を持って行動を起こさなければなりません。9月に開催される気候野心サミットで、first movers and doers(先行し行動するもの)を迎えることを楽しみにしています。世界がその動向を注視しています。地球は待ってはくれないのです。

実行する(=do / act / implement) ことが大事であるとのメッセージが、doers というたった5文字の単語に込められているのではないでしょうか。このサミットや続いて11月にドバイで開催されるCOP28で、気候関連の移行への資金提供や適応策、損失と損害への具体策が議論されるものと期待します。

こちらも合わせてご覧ください:
アントニオ・グテーレス事務総長の記者会見(2023年6月15日、UN Web TV、ビデオおよびスピーチ全文:英語)

※試訳は筆者によるものです。

Photo by Tobias Rademacher via Unsplash

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