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エネルギー移行 繁栄の共有こそ未来への道
今年に入り、ブラジルのアマゾンに住む先住民族ヤノマミ族の乳児死亡率が急激に高まっていることが明らかになりました。2022年から16%上昇、ブラジル平均の7倍に相当する死亡率だそうです。その主な原因として、金の不法採掘が横行して河川に水銀が流出したことが指摘されています。
公正さよりスピード重視で進むエネルギー移行
電気自動車をはじめとするクリーンエネルギー技術への世界的な移行を背景に、それらの製造に欠かせない「移行鉱物(transition minerals)」への需要が高まっています。
国際人権NGOビジネスと人権リソースセンターが6月に発表した報告書『Transition Minerals Tracker: 2022 Analysis』は、移行鉱物の採掘事業に関連する権利侵害が疑われる事例について行った調査に基づき、エネルギー移行の機運が高まる一方、その影で先住民族など社会的に脆弱な立場の人々や地球環境が今なお犠牲を強いられている現状を伝えています。
報告書の序文冒頭にあるジンバブエ環境法協会エグゼクティブ・ディレクターの言葉が象徴的です:
The reality of living in a cleaner, greener world is that we still need to get our hands dirty through mining activities.
(試訳:よりクリーンで環境にやさしい世界を生きることは、私たちがこれからも採掘に携わって手を汚していかなければならないという現実の裏返しである)
アマゾンでの金採掘も、前大統領の方針という要因はありつつも、やはり世界的な需要の高まりの後押しがあって進められた開発であり、公正さを蔑ろにしてエネルギー移行を急ぐあまり出てしまった犠牲といえます。
繁栄を共有した先に未来はある
前述した報告書は、真に公正なエネルギー移行を実現するための原則の一つに以下を挙げています。
Shared prosperity that builds workers and community rights in operations and supply chains
(試訳:事業およびサプライチェーンにおける労働者とコミュニティの権利が守られた上での繁栄の共有)
エネルギー移行は、気候危機を生き延びるための対策の一つであり、世界的に待ったなしで進める必要があります。しかし、その先にあるはずの繁栄を享受できる人とできない人が出るやり方は公正とは言えません。また、そうしたやり方は地球環境にとっても持続可能ではなく、遅かれ早かれ人類の未来は閉ざされてしまうのではないでしょうか。
shared prosperityという考え方が単なる理想論として空しく響いてしまうのが今の世の中かもしれません。それでも、諦めずに追い求めることが未来につながる唯一の方法であり、一番の近道なのだと思います。
(Photo by afandi_ahmad_syaikhu via Pixabay)
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