言葉の広がりが変革を後押し gender-transformative

2023 / 7 / 8 | カテゴリー: | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

(Photo by Danny Lee on Splash)

前回のブログでは、プラン・インターナショナルの「ジェンダー・トランスフォーマティブ・プログラムガイドブック」で提唱されているアプローチの要素について、ご紹介しました。今回は、その一つの「多様性と包摂(diversity and inclusion)」に注目します。

ジェンダー主流化から複合化する差別の解決へ

「ジェンダーの問題でD&I?」と思う方もいれば、「当然そうなるよね」とうなずく方もあるかもしれません。かつては男女格差に特化して多くのプログラムや取り組みが行われてきました。ジェンダー主流化(Gender Mainstreaming)というアプローチが第4回世界女性会議で提唱されたのは1995年。開発事業においては、事業のすべての段階(計画、実施、モニタリング・評価)にジェンダー平等と女性のエンパワメントを推進する視点を取り込み、実践することを指します。2015年のSDGs採択を契機にさまざまな分野でジェンダー主流化が進められるようになった、とその最前線で活動されていた方が話しています

しかし、それからやがて8年が経とうとしている今、社会にある差別は、ジェンダーだけでなく、人種、国籍、障害の有無など複数のアイデンティティが重なり合うことで複合的なものになっています。上述のガイドブックが画期的なのは、社会に存在する差別や、差別によって不利益を被るすべての人に対象を広げたことです。

インターセクショナリティという言葉の広がり

その背景には、SDGsの「誰一人取り残さない」社会の実現という理念があるのはもちろんですが、その他に「インターセクショナリティ(交差性)」という考え方と言葉が広まったことも影響しているのではないでしょうか。現在ある差別の特徴や難しさを一言で言い表すこの言葉が広まったことで、取り組みがより深いものになっているように思います。

人権やジェンダーに関する訳語はカタカナのものが多く、スッと理解されるよう、説明を添えることをご提案したりします。実際に、「gender transformative」を「ジェンダー・トランスフォーマティブな(ジェンダーにまつわる課題に変革をもたらす)」とするようご提案し採用されました。

「gender equality」は、「ジェンダー平等」が定訳になりました。それは時とともにLGBTQ+といったアイデンティティも含めて「ジェンダー」というカタカナ語の考え方が繰り返し語られ広まったからこそ、です。「男女共同参画」という訳語もそろそろ使われなくなっていいころかもしれません。

参考資料
JICA事業におけるジェンダー主流化のための手引き(独立行政法人 国際協力機構、2023年1月改訂)

※こちらの記事もあわせてご覧ください。
インターセクショナリティ 差別の複合的な構造を表す概念
Inclusive language 「誰一人取り残さない」表現

(Photo by Danny Nee via Unsplash)

このエントリーをはてなブックマークに追加