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全社会的アプローチで挑む生物多様性の保全
(Photo by AndreasAux via Pixabay)
2022年12月のCOP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」。
生物多様性の保全を通して2050年までに目指すビジョンと具体的なゴール、またその実現のために2030年までに完了するよう取り組む23のターゲットが定められています。
気候変動に比べると、生物多様性は身近な問題として感じにくい側面があるかもしれません。この枠組には、世界が目指すビジョンの達成に向け、私たち消費者に期待される役割が示されています。
求められるのは消費パターンの変容
23あるターゲットのうち、15番目として、持続可能な生産パターンを確保するために企業による実施が奨励される項目が提示されています。その中の一つに以下があります。
Provide information needed to consumers to promote sustainable consumption patterns.
「持続可能な消費パターンを推進するために消費者に必要な情報を提供する」
また、続くターゲット16には次のように記されています。
Ensure that people are encouraged and enabled to make sustainable consumption choices…, and by 2030, reduce the global footprint of consumption in an equitable manner, …in order for all people to live well in harmony with Mother Earth.
「すべての人々が母なる地球とうまく共生するために、・・・人々が持続可能な消費の選択を奨励され、行うことができるようにするとともに、2030年までに、・・・消費のグローバルフットプリントを衡平な形で削減する。」
生物多様性というと、農業や漁業、林業を中心とした生産による影響に意識が向きがちですが、消費のあり方もセットで変えなければ、その損失を食い止めることはできません。消費者の行動がカギを握っているとも言えるのです。
全社会的アプローチで変革を目指す
とはいえ、これまで当たり前とされてきた消費パターンを変えるのは、そう思えるだけの根拠がないと難しいものです。その根拠となる知識を私たち一人ひとりが持つために、同枠組では、さまざまな教育プログラムに生物多様性の保全と持続可能な利用に関するカリキュラムを取り入れることを提案し、そうした教育を通じて、「自然との共生に調和した知識、態度、価値観、行動、ライフスタイルを推進する」ことを目指しています。
まずは、知ること。そして、その学びを実践していくことが私たち一人ひとりに期待されています。
生物多様性は人が生きていく上で基盤となるもの。その恩恵を将来世代も持続的に利用できるよう維持していくには、まず個人個人が意識と行動を変え、それを大きな変革につなげていかなくてはなりません。文字どおり、全社会的なアプローチ(whole-of-society)が求められています。
※カギ括弧の和文はすべて環境省仮訳で、太字は筆者によるものです。
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