タネの生物多様性

2023 / 4 / 7 | カテゴリー: | 執筆者:Yasuko Sato

4月10日は「シード(seed)の日」=「タネの日」です。これはタキイ種苗という会社が独自に設定しているものですが、さまざまな植物がぐんぐん成長し始める春は、タネについて考えるのにピッタリの季節です。

種子の自給率

諸外国に比べてきわめて低い日本の食料自給率。2021年度の自給率はカロリーベースで38%です。そして食料自給率にも増して低いのがタネの自給率で、野菜種子の9割は外国産です。農林水産省のデータでは野菜の自給率は75%ですが、タネの自給率も考慮すると「真の自給率は8%」ともいわれています。コロナ禍でマスクや防護服が不足したように、何らかの原因で物流が混乱し、タネの輸入が滞れば、私たちの食卓が大きな影響を受けることは想像に難くありません。

失われていく遺伝的多様性

同じ種の中でも、個体ごとに遺伝的な違いが多くあることを遺伝的多様性(genetic diversity)と言います。この遺伝的多様性が、急速に失われつつあります。カナダのタネの多様性を守る活動をしているNPO・Seeds of Diversityによれば、過去100年で、世界の食料生物多様性(food biodiversity)は75%が失われ、現存する栽培作物の遺伝子プールの90%は商業的に利用されていません。栽培作物は自然界で自然に育つことはなく、人が育ててタネをつないでいかなければ永遠に失われてしまいます。

生物多様性は食料安全保障のカギ

国連食糧農業機関(FAO)によれば、日々私たちが摂取しているカロリーの大部分は200にも満たない少数の品種に依存しているといいます。気候変動や外来種、その他の環境変化が起こったとき、これらの品種がその変化に適応できなかったらどうなるでしょうか?

Diversity is our food’s life insurance. It is crop biodiversity that keeps our food systems strong and resilient against these real and menacing threats.
多様性は食料の生命保険といえます。こうした現実の恐ろしい脅威に対して、作物の生物多様性があればこそ、食料システムの強さと回復力が維持されるのです。(試訳)

ほんの1世紀前まで、家庭菜園や農場で誰もがタネを採取していました。どんなに技術や設備があったとしても、少数の専門家だけでタネの多様性を守っていくことはできず、一般のたくさんの人たちの力が欠かせないとSeeds of Diversityは述べています。そのささやかな一翼を担う人が一人でも一社でも多く増えていく必要があります。

気軽に読めるタネの本
『タネの未来 僕が15歳でタネの会社を起業したわけ』

※こちらの記事もあわせてご覧ください。
「種にこだわる」~F1種と固定種・在来種(エアルーム)~
食の未来のために、どう作り、どう守るか
家族農業のmultidimensionality
マイナスをプラスに変えるリジェネラティブ農業

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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