Translators in Sustainability
役員報酬へのESG組み込み 意義ある仕組みにするには?
ESGの取り組みと役員報酬を連動させる企業が日本でも増えています。KPMGの調査によると、日本のTOPIX100のうちESG要素を考慮する報酬制度を導入しているのは40%(2021年)とされています。用いられる指標は、各種調査によって結果は異なりますが、CO2排出、従業員エンゲージメント、女性管理職比率が上位を占めるようです(ウイリス・タワーズワトソンによる調査、デロイトトーマツによる調査も参照)
責任ある報酬の原則
ESG推進に欠かせない経営層のコミットメントを促すこうした動きは当然歓迎されるものですが、企業が社会的責任を確実に果たすためのインセンティブとして効果的な報酬制度にするには、どのようなことが必要でしょうか? そのヒントを提示するのが、オランダのNGOリワード・バリュー財団が今年1月にダボス会議で発表した「Principles of Responsible Remuneration (PRR)」です。
PRRは、責任ある報酬制度に求められる要素として、以下の6つの原則を掲げています。
- Purpose:自社が掲げるパーパスやバリューを反映・支持する報酬方針とすること
- Performance:自社の財務・環境・社会的インパクトに関する目標の達成/未達に対するインセンティブや見返りを含む報酬設計とすること
- Impact:もっとも大きなインパクトをもたらすと想定されるトピックを重視した報酬とすること
- Long-term:報酬制度の時間軸については、短期的な財務成績よりも、長期的な価値創造を優先すること
- Engagement:企業の活動によってもっとも影響を受ける利害関係を持つ者のインプットを踏まえて、独立した委員会により報酬を決定すること
- Transparent:報酬について、透明性と比較可能性の高い開示をすること
さらに、PRRのウェブサイトでは、上記の原則を実現する報酬制度設計のためのステップも説明されています。
本気度を示すために
冒頭でESG連動報酬は日本でも「増えてきている」と述べましたが、上記の同調査によると、算定指標が「不明」というケースがCO2排出削減量といった具体的指標よりもはるかに多いのも日本企業の特徴です。その場合、報酬の算定に用いた要素としては「ESGへの取組み状況」や「ESG目標への貢献」というように曖昧に記載されていますが、これでは、その報酬制度がインセンティブとして効果的なのかをステークホルダーが判断することはできません。
もしESGに本気で取り組むと言いつつ、報酬と具体的なESG指標を明確に紐づけていないとしたら、その「本気度」はステークホルダーにどの程度伝わるでしょうか?
言行一致したESG経営のために、ESG指標の報酬への組み込み、さらにはPRRのような枠組みに沿った制度設計の重要性は、今後ますます認識されていくものと予想されます。
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Photo by Jason Leung via Unsplash